安全教育モジュール
「危険地図」を利用した安全教育

 「危険地図」(「ヒヤリ地図」として知られている)は、地域や学校での生活の中で、ヒヤリとした場所やハッとした場所などを、地図の上に何色かのタック シールを貼るなどによって示し、危険な場所が地図の上で確認できるようにしたものである。「危険地図」を利用した安全教育・事故防止の活動を行うことによ り、危険箇所の改善や安全対策に役立つ、危険箇所を認識できる、交通安全意識を高揚できる、交通安全指導に役立つ、非参加者に危険箇所を周知させ、情報を 共有することができる、などの効果が期待される。
 学校においても、「危険地図」を利用した安全教育・事故防止の活動を実施することが可能である。なお、実施に当っては家庭や地域住民との協力も大切であ る。

実施要領は、次のようなものである。

1.地域:子どもの住居を元に担当地域を分けて、その地域および通学路の調査を行う。

2.学年:小学校中学年〜中等学校の子どもが主に担当する。小規模の学校では全校で、大規模の学校では学年を選んで実施する。

3.実施計画
1)学校での話し合い:授業時間に学級または学年全体で、以前に事故が起きた場所や「ひやり」とした場所、及びその他、危険だと思う場所について話し合 いを行う。
2)実地調査:学校の休みの日、あるいは授業終了後に、実地調査を行う。
3)地図の作成・掲示:授業時間に学級または学年全体で、調査結果を元に、色を塗ったり、色紙で作ったマークやタックシールを貼ったりするなどして、 「危険地図」をきれいに完成させる。
4)地図の掲示:作成した「危険地図」を学内に貼り出し、他の子どもたちや地域の人に見てもらう。

4.実地調査の方法
1)調査グループ:数人の子どもたちのグループが、調査中の安全のために出来るだけ1名以上の保護者に付き添ってもらい、いっしょに調査を行う。
2)地図:あらかじめ担当地域の地図を作っておく。調査時に現地に持っていき、危険箇所を見つけたら鉛筆でメモをとる。

5.地図づくりの調査項目
1)交通安全:事故のあった場所、自動車、オートバイ、自転車などに「ひやり」とした場所、危険を感じる場所、歩きにくい危険な場所
(路上駐車、放置自転車、路上の障害物など)
2)地域安全:川、池、沼、がけ、沢、などの地理的な危険場所、へびや毒草などの危険な動植物、工事現場、その他
3)犯罪防止:「きょうかつ」、「ひったくり」、「ちかん」などにあった・あいそうな場所、「空き家」など
4)環境:お花がきれいな場所、ゴミの「ポイ捨て」が多い道、ゴミがきちんと出してある指定の場所、ゴミが散乱している場所、など

5.危険地図の活用
1)学校、家庭、及び地域、行政などが協力して、発見された危険箇所のうち改善可能な場所について、危険を減らすような措置を取る。 2)子どもに、危険箇所を周知し、安全な行動についての指導を行う。

6.働きかけの効果に関する評価項目
 以下の点について、教師や子どもによる評価を行うことが望まれる。
1)「危険地図」と作成の取り組み
 どのような「危険地図」が作られたか、「危険地図」作りをしてどのような感想を持ったか。
また、作成に当って、子どもや教師などがどのように関わったか。
2)環境や行動の変化
計画実施の後、一定期間を置いて、以下の事柄を調べる。
危険箇所に関して改善された場所があるか、また、そのような場所では、どのように環境が改善されたか。
教師の安全管理に対する意識や行動に変化があったか。子どもの事故防止に対する意識や行動に変化があったか。(質問紙などを用いて調べる。)
3)事故件数・事故率
 できれば、以下のように、事故件数や事故率(人数1000人当りの事故件数)を、働きかけの前後で比較する。また、働きかけを実施していない地域の同時 期の値と、おのおの比較する。
計画を実施する前に、一定期間内に、学校内及び通学中に起きた子どもの事故・傷害の実態(数・状況)を把握しておく。また、家庭や近隣での事故で、子ども が地域の保健機関にかかったような傷害を負った事例について把握しておく。そして、働きかけ後に、一定期間に同じように調査し、働きかけの前後における違 いを比較する。
 ただし、事故の発生には季節的な影響や学校行事等による影響が関わっている可能性があるので、働きかけを実施していない地域との比較を行うことも大切で ある。

参考文献
1)松村みち子:「ヒヤリ地図」を利用した安全教育・事故防止、(子どもの危機管理研究会編):「子どもの危機管理の実態とその改善方策に関する調査研 究」、145-168、伊藤忠記念財団、2004