インタビュー
調査
データバンク登録者を中心として、50人の識者を対象にインタビュー調査を行った。それらの回答のうちから、抜粋したものを以下に掲載する。
インタビュアー 佐川哲也 金沢大学助教授
回答者1 M.K
2004年2月9日
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
3年前から、NGO活動教育センター(NERC)という市民団体を組織し、開発途上国の教育支援活動、主にカンボジアの子どもたちの基礎教育支援活動を
おこなっている。
昨年、特定非営利活動法人となった。また、昨年8月に私が所属する神戸学院大学の学生ボランティア団体である神戸学院大学ボランティア活動基金(VAF)
と共にカンボジアに現地事務所を開設し、日本人スタッフ1名、カンボジア人スタッフ3名、カンボジア人ボランティアスタッフ18名の規模で、現在5カ所の
村で学校に行けない子どもたちを中心に絵本や紙芝居などをつかった巡回教育活動、および教材作成活動を実施している。
また、国内では、カンボジアの子どもたちのための絵本(クメール語、英語、日本語併記)と紙芝居をVAFおよび神戸女学院大学NERC、京都外国語大学
ハビタットの3つの学生ボランティア団体と提携して作成している。
さらに、本年度は、カンボジアに小学校建設を計画している。
一方、私は個人的に日本政府(JICAの中に組織されている)国際緊急援助隊に所属しており、昨年5月のアルジェリア地震の救援活動に派遣された。本年
からは緊急援助隊の研修の講師も兼ねている。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
まだ活動して日が浅いので大きな成果は出ていないが、下記の成果は確実にあがっていると考える。
(1)支援活動対象のカンボジアの子どもたちの識字率および基礎教育力の向上。
(2)カンボジア事務所におけるカンボジア人ボランティアスタッフの教育指導力や翻訳力の向上。
(3)支援活動を行っている大学生の国際的視野の拡大と国際協力活動体験による人格形成。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
(1)カンボジアのトイレ事情に関する調査。
(2)カンボジアの学校におけるトイレの普及、使用状況に関する調査。
(3)来年度は、カンボジアの子どもたちのための公衆衛生教育教材の開発、作成を企画している。
(4)長期的には、カンボジアの農村部の学校におけるトイレ整備も行いたい。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
私たちが実施しているプロジェクトサイトにおいても、公衆衛生施設整備(井戸、トイレ)と公衆衛生意識の向上は急務である。
特にトイレに関しては、すでに調査もある程度行っており、また日本トイレ協会やカンボジアでトイレ整備支援をおこなっているNGO団体シェアとの交流も
あり、資金的な問題が解決されれば、カンボジアの学校におけるトイレ整備、教育支援活動は是非実施していきたいと考えている。具体的には、学校における支
援活動は、主にカンボジア北部のポイペトの複数の小学校で実施できる体制にある。また、ノンホーマル教育施設についてはプノンペン郊外において複数箇所で
可能である。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
わが国が行うべき国際教育協力のあり方は、現地の状況やニーズを把握し、それにあった協力活動が大前提であると考える。
したがって、わが国の高度な教育技術やシステムをそのまま移転するのではなく現地の状況にそったものを開発する必要がある。
また、現地スタッフの指導とともに彼らの主体性を尊重した活動が必要である。さらに、支援側としては、単に専門家があたるのではなく、未来を担う学生た
ちに対して国際協力活動のリーダーとしての資質を養う機会を与えていくことを念頭においた活動が重要であると考える。
なお、教育協力は、すぐに成果のでる支援ではなく、10年単位で捉えるべきものであるため、長期的なプロジェクトとして立ち上げて、イベント的なもので
はなく継続した協力活動を実施し、最終的には現地の人々が自立して活動していけるものにしなければならない。
カンボジアの場合、学校における公衆衛生教育の必要性は非常に高いが、まず識字率の向上が望まれる。農村部の識字率は3割にも満たないところが多く、学
校もない村があり、学校があっても1年生や2年生までしかクラスがない学校も多く存在する。また、村に井戸が一つしかなかったり、トイレが村に一つもない
ということがあたりまえである。もちろん学校にトイレがないのが普通である。このような現状のなかでの公衆衛生教育は息の長い活動が必要である。
まず、少なくとも学校における水とトイレの確保が必要である。(各家庭に普及するのは当面非現実的)
次に、学校にいっている子どもたちへの公衆衛生教育を行う必要があるが、そのテキストは現地の水やトイレの状況にそったものでなければ意味がない。
さらに、学校にいけない子どもたちに対しては識字教育をおこないながら公衆衛生教育をおこなっていかなればならない。そのためには公衆衛生の意識や知識
を高める教材をつかった識字教育が効率的と考える。(来年度はそのための絵本を作成する予定)
回答者2 K.E (N大学)
2004年2月5日
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなもので したか。
(1)青年海外協力隊の体育隊員として、ネパール王国文部省の管轄下にある西部教育事務所に約3年間勤務。現地スタッフと共に、1ヵ月の体育教師の再教育
トレーニングを3カ所で、1週間の体育教師の再教育トレーニングを5カ所以上、企画・実施しました。
(2)上記の期間、教師用の体育指導書(ネパール語版)を作成しました。
(3)上記の期間、現地の中・高校生を対象に、体力測定を実施しました。
「青年海外協力隊」ということで、現地と関係を築く政府間の交渉などをする必要が なく、直接介入できた点では、とても楽でした。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
現地のスタッフが中心となり、それをサポートする場合と、自分が中心となり、新しい考え方・技術を移転する場合と2とおりありました。JICAの専門
家ではなく、協力隊の隊員であったため、いずれも政府レベルではなく、学校レベルが対象となり、現場の教師には教授法などの技術移転ができましたが、それ
らを国レベルまでに持ち上げるには至りませんでした。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組 みがありますか。それはどのようなものですか。
「国際協力・援助」という目的ではなく、研究の一環として、タイ国、ネパール王国で、それぞれ、学校保健に関するアンケート調査を実施したことがありま
す。結果の活用は、間接的に国際協力・援助になるのかも知れません。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能 だとすれば、それはどのようなことですか。
内容にもよりますが、立場上は可能です。
その場合は、学校現場の基礎的データの収集(児童の生活環境調査、体力測定、病気や衛生などに関する知識・意識調査など)、健康教育に関する教師の再教
育、保健科教育の教材開発などです。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものであると考えますか。
教育は、国の経済や文化の影響を強く受けています。したがって、単一的な考えというものはあり得ません。まずは「教育」を含め、国情を把握し、その上で
何が問題となっており、それに対して何ができるかを検討する必要があると考えます。
6.その他
「援助・協力」と「研究」は異なるので、その境が難しいところです。
回答者3 N
1.これまであなたが海外で関わってきた、国際協力・援助または研究はどのようなものでしたか。
1995年12月から1997年12月までの2年間、青年海外協力隊としてネパール王国に派遣され、ネパールの学校体育、主として中学校課程における体
育科教育普及のための援助活動を行いました。
2年間のうち1年半は、西部地区地方教育事務所(日本の県教育委員会に類似した組織)に所属し、体育・芸術課スタッフの一員として、現地の公務員ととも
に、管轄する郡(17郡)の学校視察および体育教員の養成に取り組みました。具体的な活動としては、郡単位での教員講習会の開催(指導書を用いた体育の指
導方法の伝達講習)、郡や地域単位での各種スポーツ大会(陸上競技、バレーボール、民族舞踊)の開催と同全国大会の運営補助などがあげられます。
残りの半年は、配属先を首都カトマンドゥ近郊に位置する教育省教科書カリキュラム開発センターに移し、新学習指導要領に基づいたネパール語での「中学校
保健体育教師用指導書」の作成作業を行いました。中学3年生課程の教師用指導書を、日本からの助成金を得て約6000部印刷しました。指導書の内容のう
ち、体育分野の内容精選と記述は日本の青年海外協力隊4名が、保健分野は国立トリブワン大学教育学部保健体育教授1名が担当しました。そして、製本された
指導書を、ネパール全土の公立中学校へ配布することを試みました。
以上が、私がネパールで行った援助活動です。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助または研究の成果はどのようなものでしたか。
教育という分野における協力・支援活動はその成果がはっきりと目に見えにくいと言えます。そこで、我々は援助活動の成果を形として残すことを考え、指導
書作成および指導書を用いた体育科教育方法の普及を活動の目的としました。ネパールで初めて中学校保健体育教師用指導書の作成が行われたという点で、この
活動は評価されます。つまり、ネパールの最高教育行政機関である教育省から指導書が発行され、マニュアルという形で指導法が示されたことにより、ネパール
の体育科教育の方針や方向性、具体的な教育目的と方法が普遍化されやすい段階に達したと言えます。しかしながら、印刷・製本された指導書は、ネパールの中
学校教員に活用されてこそ、その成果が認められるものです。以下の3つの問題点から、この指導書が広く活用されたとは言い難い状況が指摘できます。
(1)ネパールは、その国土が日本の北海道の2倍程度であるにもかかわらず、標高300mの平野地帯から8800mを越えるヒマラヤ山脈まで、その地形は
複雑であり、道路や交通機関の整備が困難な国です。特に山岳地帯では交通手段が徒歩に限られます。荷の運搬も動物や人の手によって行われているため、丘
陵・山岳地帯の村々のすべての学校へ指導書を運ぶことは不可能であると言えます。6000部の指導書は、このような状況からその多くが各郡や地域の教育事
務所に留まり、学校現場まで行き渡らないという問題が生じています。
(2)ネパールの公立学校には体育専属の教員が配置されることはごく稀です。そのため、理数科など他教科の教員が体育を指導するケースが多く、体育科教育
への関心や必要性の認識が低いというのが現状です。
(3)作成された指導書中に示される教材は、そのほとんどがサッカーやバスケットボール、バレーボール、陸上競技などの西欧発祥の競技スポーツや、日本で
行われている徒手体操、体ほぐし運動や体力テスト、またインドで盛んなカバディやココ(インド発祥の鬼ごっこに似たゲーム)ヨガなどで構成され、ネパール
ではすべて新しく学習しなければ実践できない教材ばかりです。これらの運動に必要な用具や設備の整った公立学校は稀少であり、また地形の複雑さ、多様な民
族や文化の存在によって、普及が困難であると言えます。ネパールという国の文化的・地理的状況、そして人々のニーズを把握し、カリキュラム・教材開発に努
めるべきであると考えます。
以上が、我々の行った援助活動の自己評価です。
3.あなたが取り組んできた国際協力・援助または研究のうち、学校保健等に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
学校保健に関連した援助活動として、次の2つがあげられます。
(1)前述の保健体育教師用指導書の作成活動
指導書には、中学校で指導すべき内容が体育分野と保健分野に分けて記載されました。
保健分野には次の内容についての解説が示されています。
・身体各器官の機能
・栄養
・健康と環境
・疾病
・公衆衛生
・個人の衛生管理
(2)小学校のトイレの建設
ネパールの公立学校の衛生環境は劣悪であると言えます。特に学校における下水道の整備は皆無であると言っても過言ではありません。都市部以外では、トイ
レの設置されていない学校は少なくありません。そこで、ある学校から直接依頼を受け、その学校にトイレを設置しました。首都カトマンドゥ近郊の農村に位置
する複式学級3クラスの小さな小学校でした。資金面では日本財団の経済的支援を受け、和式の汲み取り式トイレ2つ(男子用・女子用)を設置しました。工事
はネパールの職人が行いました。
4.あなたが取り組んできた学校保健等の分野で、特に発展途上地域に国際協力・援助が必要であると思われることはどのようなことですか。
特に発展途上地域では、貧困の問題や伝統的な生活形態などから、保健衛生に関する教育が困難な状況にあると言えます。学校で保健教育を行い、子どもたち
が新しい知識を身につけても、家庭において実践することは難しいと考えられます。学校や子どもたちをとりまく地域全体(地域住民)の意識が変わらなければ
成果は期待できません。地域の人々(大人)への健康教育もまた重要な課題です。学校を発信地として、地域住民への健康教育の場が必要であると思います。
5.あなたは、上記4の問題について、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものであるとお考えですか。
日本はこれまで経済的支援を中心とし、学校やそれに付随した設備の建設や整備に大きく貢献してきたと言えます。しかし、学校という「箱」ができても、そ
こには教員が不足していたり、また学校教育に関する専門的知識や技術を身につけた教員が少なく、結局は子どもたちが十分な教育を受けられないという問題が
生じています。
わが国は、次の段階として、教員養成や現職教員の質の向上を目指し、「人的支援」に積極的に取り組むべきであると考えます。その際、可能な限り現地の人
々とコミュニケーションをとり、現地の人々のニーズに合った、顔の見える援助に努めるべきであると思います。一時的な支援活動ではなく、気の長い支援活動
が必要です。それを可能にするのは、国際協力NGOなどの活動なのではないでしょうか。ODAの充実よりむしろ、NGO支援体制の充実が図られることを期
待します。
回答者4、5 F.K、T.H
平成16年2月27日
1.これまであなたが海外で関わってきた、国際協力・援助または研究はどのようなものでしたか。
私たちは、インドネシア、ベトナム、タイ、中国、韓国において、「各国における衛生状況が健康にどのような影響を与えているのか」をテーマとして調査研
究を実施してきた。各国を調査するなかで、特に「水」、具体的には水道と下水の不整備が健康に重大な問題を引き起こしているのではないかと関心を持つよう
になった。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助または研究の成果はどのようなものでしたか。
水に関わる調査の中で、およそ次のような知見を得たと考えている。
特に、インドネシアの場合が深刻だと感じていますが、水道があっても水質か悪い。例えば水道水に海水が混入しているなどの例があるようだ。また、井戸を
水源とするような場合で、トイレが近くにあって衛生上問題があるなど、地域によって様々な問題を抱えている。下水についてはほとんど整備されておらず、洪
水の場合などには感染症を拡げる心配がある。また、トイレのない地域も多い。あるいは、あってもそれらしいところで用をたして、衛生状況がきわめて悪い地
域がある。食堂などでも、衛生的に問題のある水が混入しており、衛生に対する意識が低いことが大きな問題であると考えている。ベトナムにおいて、かなり整
備が進んでいた。
3.あなたが取り組んできた国際協力・援助または研究のうち、学校保健等に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
調査地では、学校や幼稚園を訪問して観察をしたので、それらについて少し報告する。衛生設備の整備状況からいうと、インドネシアがもっとも深刻で、ベト
ナム、タイの順によくなっていったように考えている。教室環境についても同様の順序で照度が足りないようだった。「明るくすると教室の温度が上昇する」と
考えており、暗い教室が問題であると思う。ある教師へのインタビューによると「電灯を付けると熱くなるので、付けないことにしている」としており、暗さの
問題が熱さと関わっていることに気づかされた。
保健室を訪問したが、やはり整備されておらず、汚い、物がない、薬がないという状況であった。スクールナースもいなかった。学校では、病気等に対応出来
ないといわざるを得ない感じた。
ベトナムは制度と設備の点でかなり整ってきた感じがしている。
4.あなたが取り組んできた学校保健等の分野で、特に発展途上地域に国際協力・援助が必要であると思われることはどのようなことですか。
学校に衛生知識を持った教員がいないということが大きな問題であると考える。もちろん、物がない、予算がないということは深刻な問題だが、十分な衛生知
識を持った教員がいれば、物不足、予算不足に対応することができるのではないかと考えられる。中国の医療現場を観察しても同様の印象を持った。「物」より
も、「人の教育」を重視する必要がある。
もう一点は、「衛生状況を評価することができない」ということである。評価することができれば、新たな対応策を検討することができるだろうが、我々が調
査した地域では、「評価」に対する理解が全く欠落していたと考えられる。
5.あなたは、上記4の問題について、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものであるとお考えですか。
贅沢な物は、要らないと思う。これまで、高額な私金援助や物的供与が我が国の国際協力の中心であったと感じているが、方向を転換することが必要だと思
う。例えば一個のボールでも、高価な施設に匹敵する、あるいはそれを上回る効果を上げることができることもあるだろう。
国際教育協力を進めるひとつの視点は、十分な学校保健知識を持った教師の育成であると考える。そのためには、学校保健を学ぶ教員留学生の受入もひとつの
方法だと考える。現場の状況に即して柔軟に対応出来る「人作り」が教育協力ではないかと考える。
回答者6 K K大学留学生
平成16年3月1日
ミャンマーの学校保健について
1.ミャンマーの学校保健について話してください。
ミャンマーにおける学校保健は、保健体育の授業科目の中に位置しています。小学校から高等学校まで各学校段階で、1週間に1回ずつ教えることになってい
ます。保健専科の教員はおらず、大抵の場合校長先生をリーダーとして、保健体育の教師や学校内の教員を組織して保健の授業に当たっています。授業はクラス
ごとに行われることもあれば、全校一斉に行われることもあります。しかし、ミャンマーにおける学校制度は一様ではなく、学校によって大きな差があるといわ
ざるを得ません。
教科内容は決められてものがあるわけではなく、病院からの資料を教材としたり、学校内で会議を開いては内容を決定するということが一般的です。学校に
よって状況は異なりますが、保健室のある学校では、ベッド、薬、保健教材、体重計などが設置されています。日本の養護教諭や学校看護師に当たる制度はあり
ません。保健室の利用はけが人のある場合には初期治療、病人の場合は、ベッドに休ませて体温を測り様子を見る程度で、重症の場合には病院へ連れて行くなど
の措置を執ります。しかし、十分に機能していないところがほとんどかもしれません。
学校内の保健管理は主に保健体育の教師が担当しています。例えば、病院への引率は保健体育の教師が連れて行くことが多いように思います。もちろん、中学
校以上の学校です。その他、学校の内外で売られているスナック類の点検をします。こうした売店で扱われているスナックの中には、酸っぱすぎるものや衛生的
に問題のあるものが売られてることがあり、児童生徒が下痢や腹痛を起こすことがあります。私の学校では、1週間に1回以上見回りと指導を実施しています
が、おかげで、売店主からは嫌われ者になっています。しかし、子ども達の健康のために必要なことであると考えています。
学校内での飲み水については、衛生的であるかの確認をしていますが、水質検査をするようなことはできません。多くの子ども達は、自宅から水筒を持参して
飲んでいる場合も多いようです。
トイレのチェックもします。臭くないか清掃が行き届いているかなどです。こうしたチェックは、教師が単独で行う場合もあれば、子ども達を含めた学校保健
委員会を組織して実施しているところもあるようです。
給食という制度は現在のところありません。
教室環境の点検をしている学校はほとんどないと思います。
2.日本が学校保健分野で国際教育協力をするとすれば、どのようなことを期待しますか。
まず、トイレの整備に期待します。ミャンマーの学校では、トイレの問題が多く、トイレの建設に期待します。
次に、保健室の薬が不足しているので、薬の援助を期待します。薬は学校の予算で購入しなければなりませんが、学校予算が不足している現状では、薬を十分
に買いそろえることができません。ミャンマーにはユニセフの援助によって整備されたモデル校がありますが、そのような学校が増えることはありがたいことで
す。
3.国際援助・協力というとお金や物の援助をすぐにお考えになるようですが、それ以外のことで期待することがありますか。
ミャンマーでは、体育の授業にあまり関心が払われていません。興味を持って体育の授業に取り組めるようにアドバイスをして欲しいと思います。
アドバイスということで言えば、安心して水が飲めるようにするにはどうすればよいかを教えていただきたいと思います。安全な飲み水を確保するということ
は学校にとっては大きな問題です。
それから、保健教材としてどのようなことを教えたらよいのかということがよく分かっていないように思いますので、教育内容の指導に期待します。教科書が
作れるとよいと思います。
インタビュー後の印象
教育予算の不足から、援助というと直ぐ金銭的・物的供与を想像するようである。使い切ったら終わりという援助ではなく、教育による援助が持続的な効果を
期待出来ることについて気づいてくれることが必要であると感じた。
インタビュアー 大澤清二 大妻女子大学教授
回答者7 K.M
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
特に、国際協力や援助となるようなことは実施していない。ただ、在外教育施設(マレーシアのクアラルンプール日本人学校)に3年間赴任した経験があり、
その際に現地の子どもと日本人学校の児童・生徒のための国際交流会を企画した。また、ボランテイアとして一般の方に対して日本語会話を指導した。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
目に見えた成果はあがっていない。したがって、データを提供することはできないが、国際交流会やボランテイアで行った日本語会話指導を通じて、在外教育
施設近隣の方(子どもや教員を含む)には日本の教育ならびに日本文化の一端を理解してもらうことができたと考えている。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
特にない。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
可能である。他民族国家であるマレーシアに小学校教員として在住した経験や保健教科書学習指導書(小学5、6年生用)の編集に関わった経験を生かして、
小学校段階からの健康教育に関するカリキュラム作成やその国の実情に応じた教材開発に携われる可能性がある。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
現地の状況やニーズを把握し、それに対応した協力を実施することは当然のことである。しかしながら、世界的に見てもきわめてシステマテイックに整った日
本の教育システムは、現時点における教育システムに関わらず、教育の法整備も含めて長期的な視点からは開発途上にある国にとってはモデルにすべきところが
多々あると考える。また、協力を必要とする国にとって短期的には一人ひとりが「力強く生きていける」ということに焦点をしぼって、協力活動を進めていかな
ければならないだろう。したがって、常に長期的な視点での協力、また短期的な側面での協力という2本柱で国際教育協力を推進することが重要であると考え
る。
回答者8 T.S
2004年2月20日
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
コンサルタント会社に入社以来、ヴェトナム・マレーシア・フィリピン・ケニア・インドネシア・ジャマイカで日本のODAによるインフラ整備プロジェクト
の主に設計、施工を担当してきた。下記にそれぞれの国での私の担当作業を記す。
ヴェトナム:
都市排水事業において対象河川沿い主要道路の改修コンポーネントの設計を担当した。ローカルエンジニアとともに道路の機能性だけでなく、親水性や河川環
境向上を目指した設計をした。
マレーシア:
山間部道路防災という観点から日本の道路防災技術を、マレーシアの道路を管轄する公共事業省に紹介し、当該国にあった防災技術を提案した。
フィリピン:
地方都市での排水事業案件形成を目的としたミッションに参加した。対象都市では、河道沿いの一部がスラム化しており、彼らの生活に配慮した案件の形成のと
りまとめを図った。
ケニア:
地方都市における水道設計、施工管理を主に担当した。本件では、対象都市を管轄する水道局の民営化時期と同時期であったため、その新水道会社の運営面及び
技術面での支援も本件のコンサルティングサービスに含まれており、新会社支援の専門家とともに支援活動にも力を入れた。
インドネシア:
村落における水道案件で、水道計画、設計を担当した。村落住民への水道に対する啓蒙活動にも力を入れた案件で、住民インタビューの結果を重視し、持続的
な施設運営方法への配慮をしながら設計を行った。
ジャマイカ:
給水人口50万人規模の都市給水施設の改修計画及び設計を担当した。植民地時代に水道施設が設置されて以来一部改修をしながら使用されてきた施設であるの
で、老朽化が激しく、また土地利用も変わってきているので、改修計画の作成は非常に困難であった。本件は水道施設を管轄する水道公社運営面へのアドバイザ
リーサービスを含み、本件の持続性にも配慮している。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
インフラ建設案件に関しては、建設後確実に住民は便益を得ている。技術移転や、持続性のためのアドバイザリーサービスに関しては、人間へのインプットで
あるため評価は難しいが、今後の発展に寄与することは間違いない。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
上述の各案件の内、ケニアの案件では、地元小学生に対して水道の啓蒙活動を行った案件である。衛生的な水の使用と、盗水の衛生面での危険性を教育する内
容であった。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
水道施設設計では設計条件のなかに、使用者の教育レベルを考慮する必要があると最近考えている。コンサルタントである立場上、客先からの承認なくしては
案件への参画は難しいが、住民の生活実態や教育レベルを十分熟慮した上で水道と下水道を同時に計画、設計さらに施工まで行えればよいと思っている。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
教育はその地域の文化にも関係するものなので、日本の教育を押し付けるのではなく、地元のニーズをしっかりと把握し、フレキシブルに対応することが肝要
であると考える。また、最新の国際的な動向や研究結果を反映していくことも必要である。
そのためには、対象地域の実情をよく理解した日本人専門家と、教育に関して国際感覚を持った日本人専門家の両面からのインプットが必要である。しかしなが
ら、私たちのようなコンサルタントによる教育分野の協力は、相手国側の教員に対するインプットや、教育方法、教育課程に対するアドバイザリーサービスなど
が主で、対象地域に根ざしたインプットは現状の契約体系では大変難しい。JICAから派遣されるボランティアやNGO、NPOなどが地域に根ざしたイン
プットを行い、コンサルタントが長期契約で状況にあわせてピンポイントでインプットが行える体制とし、両者が綿密に連携をとれる体制が必要であろう。
回答者9 M.K
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
(1)インドネシアにおける経口避妊薬の使用実態調査
経口避妊薬が日本から無償提供され、それが実際にどのような過程を経て、供給されたかを調査した。また、経口避妊薬は医薬品であるとともに、服用方法な
どを適正に行わず性行為にいたれば妊娠のリスクを増大させてしまうことがある。そこで、無償に配布された経口避妊薬を女性がどのように使用しているのかを
調査した。
(2)ホンデュラス 医薬品の適正使用に関する調査
ホンデュラスでは、各医療機関によって無料で使用できる医薬品が決まっており、患者へ無料配布されている。しかし、実際にそれを処方する医師や看護師の
薬の処方行動は分析されてこなかった。そこで、エッセンシャルドラッグの適正使用の実態を検討するため、医師と患者の会話を記録し、それによって処方され
る医薬品、およびそれを調剤する際の調剤行動を分析し、医薬品の適正使用に関する調査を実施した。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
(1)インドネシアにおける経口避妊薬の使用実態調査
経口避妊薬は医薬品であるが、実際の服用者は医薬品としての理解は薄く、またリスクがあって中止してしまったり、逆にリスクが出ているにも関わらず服用
しつづけているなど多くの問題が抽出された。その他、飲み忘れたときの対処方法を理解していない人が多く、不適正な使用により妊娠してしまうケースがあ
り、経口避妊薬の適正使用における対策が急務であることが示された。
(2)ホンデュラス 医薬品の適正使用に関する調査
医師の処方行動は個人差があり、同じ薬のリストから選択しているにも関わらず、医療機関によって処方行動がまったく異なっており、医療水準の平均化が必
要になる。また、調剤は薬剤師などの有資格者が行っておらず、一般の人がやっておりトレーニングなどは全くされていない。したがって、無駄になってしまっ
た医薬品がある、渡し忘れやミスなどが見られるといった問題点が抽出された。この結果はその地域の保健省へ報告をした。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
学校保健分野に間接的には関連があるが、直接的な関連のある取り組みはしていない。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
二カ国で医薬品に関する調査を行った。しかし、医薬品の服用者は具合が悪ければ医療機関にアクセスする、経口避妊薬を服用することで避妊ができることは
理解しているが、服用行動に様々な問題が見られ、医薬品のリスクに関しても同様であった。医薬品の効果やリスクを示す指標の一つに自分の身体をいかに理解
するかということがある。私は日本において“女性のためのおくすり手帳”を監修している。作成に至った理由として、女性が自分の身体と上手につきあえず、
また自分の身体のことをよく知らずに医療を受診したり、医薬品を服用することが見られることであった。自分の身体を知る教育は学校保健分野で重要な要素で
あり、生涯の健康を維持するのに必要なことである。また、そこに医薬品との付き合い方を考えられる機会も含めるべきで、“自分の身体を知る→医療や医薬品
と上手につきあうための知識→生涯の健康を考える”といった一連の流れを理解できるようなプログラムを提供することが可能である。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
医療に関する介入として医療従事者の派遣、医薬品の購入についての援助がされている。しかし、医薬品の援助は物質的なものという形での援助となりがち
で、適正な使用をどのように行うべきか、各国の事情を鑑みての援助協力が少ない。
医薬品は大きなメリットをもたらすとともに、リスクをもたらすことがあり、その点をより改善するように配慮した協力をしていくべきである。
回答者10 T.K
2004年2月26日
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
今まで、国際共同研究として、いくつかメンタルヘルスに関する疫学調査には参加して来ましたが、国際協力・援助活動には参加したことはありません。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
特にありません。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それは
特にありません。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
可能だと思います。特に児童思春期のメンタルヘルスの改善のために国際比較調査については、さまざまな経験があると思います。機会があればぜひ参加した
く存じます。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
専門のメンタルヘルスの分野に限って言えば、まだまだ手付かずの部分が多いため、まずは、協力をする国の現状がどうであるのか、どのような協力が望まれ
ているのか、また、可能であるのか、といった基礎調査をする必要があると思います。その際には、国際比較可能な調査票を用いて、協力する国の特殊な事情を
浮き彫りにした上で、その国独自の健康教育プログラムを作成することが重要ではないかと考えます。わが国としては、このように、その国の文化事情や社会情
勢に合わせた教育プログラムを作成するための具体的な方法の部分の手助けをしていくことが、まずは肝要ではないかと思います。
回答者11 S.C
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
私は、NGOサテイ・フアウンデーションが設立された1998年から会員となって、主にネパールで活動しています。
開発途上国と言われているネパール国内でも、自分たちの力で前進しようとするグループが多く生まれてきています。そのようなグループに対しての活動運営資
金や技術支援、教育支援、また、現地製品のフェアトレードによる経済支援等がこのNGOの主な活動です。
フェアトレード以外の経済支援としては、ネパール東北部ドラカ地区の山岳少数民族タミー族を対象に、ひよこを買う資金を貸与し、卵や鶏の販売による現金
収入への道をつけ、また栄養改善に寄与するチキンバンク活動をしてきて参りました。しかし、2001年の国王暗殺事件をきっかけにネパール国内の治安状況
が極端に悪化しているため、経過確認の現地調査が出来ないでいます。
教育支援としては、貧困学生に奨学金支給をしています。奨学生は、主に無医村地区出身の医療従事者を希望している学生です。彼らは資格を取得した後、出
身地に戻って、村の医療活動に当たっています。また、2000年には図書館を設立し、地域の文化、教育施設として役立っています。図書館の運営について
は、現地NGOが担当しています。
医療支援活動として、現地NGOグループが無医村地区で行っている無償の医療ボランティア活動と協働しています。この活動に過去5回ほど参加しました
が、治療より前に必要なのは衛生教育ではないかとの反省や意見が日本側メンバーから多く出てきました。このことから人々の保健衛生の意識を向上させるには
どうしたらよいのかという検討を行い、首都カトマンズから峠を一つ越えたところに位置するダーディン郡バイレニ村を定点とし、村の学校に通っている学童の
健康水準の向上を目指す保健教育プロジェクトを発足させることとなりました。私は、このプロジェクトの日本側の担当代表になっています。
わが国内においてはフェアトレード商品のバザーを行っています。今後は、健康教育教材の開発に着手していきたいと考えています。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなのもですか。
a.ネパールにおけるNGOサテイ・フアウンデーションの活動により、無医村地区から
の医療従事希望の学生に対する奨学金支給によって、彼らは資格取得後、村に戻り、医療活動を開始しており、村民から大変感謝されています。
b.協働・友好関係にある現地のNGOグループの活動が活発化してきています。
c.連絡要員としての現地スタッフの翻訳能力が向上してきました。
d.学校建設により、現地の子どもたちの識字教育に貢献できた。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
a.2001年度、カトマンズ市内とエベレスト街道沿いの山岳少数民族について、「歯
磨き習慣の有無について」調査を実施しました。
b.2002年度、ネパールの貧困住民が多くいる地区にある学校で、学童の発育測定と健康診断を行いました。同時に学童への健康意識アンケート調査と学校
施設及び環境衛生についての調査を実施しました。
c.2003年度から、パイレニ村の学童に対する健康教育プロジェクトの第一ステップとして「健康教育担当者の養成」について現地と具体的な検討・調整に
入っています。長期的には、学童を対象に健康教育を実施することで、家庭へ、そして広く地域住民へと健康の向上が波及してことを期待しています。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
私たちのプロジェクトを遂行するために、Ql〜Q3のように取り組んでいます。昨年は、パイレニ村で医療活動を実施していますので、住民の衛生意識向上
と健康教育の必要性については概ね現地との合意が得られています。
同地区の健康教育担当者が育って、このプロジェクトが軌道に乗ってくれば、学童への発育・健康診断の分析結果から健康課題を明らかにし、健康教育計画の
企画に取りかかる予定です。
これらの経験を生かし、他国に発展させることが可能です。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
我が国が取り組むべき国際教育協力は、現地の状況とニーズにあった協力でなければならないと考えています。日本の成熟した教育システムや技術をそのまま
移入するのではなく、現地の状況や宗教・生活習慣にも合致するものに作りかえて提供していく柔軟さが必要と思います。
また、性急に成果を期待せず、着実に現地の力が育っていくような支援活動をしていくことが重要と考えます。
最終的には、現地の力が育って、現地の力によって、現地に合った教育システムが構築され、発展していくものでなければならないと考えます。
ネパールも他の発展途上国と同様に国民の識字率は低いのですが、私たちは当面、学校教育を受けている学童に対しての健康教育の実施に向けた計画を考えて
います。その為の第一ステップとして、「学校での健康教育担当者の養成」を提案していくことにしています。
(付記)
私は養護教諭として公立学校に勤務しています。3年毎に開催されている健康教育世界会議において、日本の学校保健における養護教諭の仕事の有効性につい
て報告して参りました。今年4月26日からオーストラリア第18回健康教育世界会議メルボルン大会において報告をいたします。日本の養護教諭制度は世界で
も特異であり、子どもの健康の保護と発達を保障するために重要な仕事を担っていることを、世界に向けて発信し続けて参りました。
日本の学校保健活動の手法を取り入れたJICA関連の保健教育事業では、友人の杉本記久恵さんから、アフリカ・ニジェールとマリの学校で、大きな成果が
得られていると報告がなされています。
回答者12 I.K
1.これまで実施してきた国際協力・援助について
1983年より、東南アジア諸国(ブルネイ、インドネシア、マレイシア、フイリピン、シンガポール、タイ、ヴィエトナム:平成15年12月現
在)を対象とした東南アジア医療情報協力事業(SEAMIC)を、(財)日本国際医療団に対する外務省補助金により実施してきた。
各国とも保健省をカウンターパートとし、各保健省内に次官を長とするSEAMIC協力委員会を設置し、主として感染症対策、保健統計、栄養改善、医学文
献情報分野のプログラムを展開してきた。
プログラムの形態は、
(1)次年度の年間計画を決定するコンファレンス(年一回:議長国持ち回り)
(2)テクニカルミーティング(年一回:上記4つの事業分野の各国担当者の会合)
(3)ワ−クショップ(年一回:各国での緊急もしくは共通関心テーマの会合)
(4)各国における国別集団研修(年15コース程度を実施)
(5)文献情報サービス(医学文献複写やSEAMIC出版物の作成)
(6)各種寄贈プログラム(医学雑誌・図書、医学データベース、感染症検査試薬など)
(7)国内受入研修(年15名程度:期間一ヶ月) である。
またJICAからの委託業務として、感染症関連調査業務や、途上国高級保健行政官のための国内研修コースの企画運営、また国際会議や学会でのJICA広報
業務の企画なども行った。
2.これまでの国際協力・援助の成果
感染症対策:当初は腸管感染症に重点を置いて、検査診断情報の提供、交換を通じ、研究・技術開発並びに人材養成の促進・充実を図り、各国での検査体制の
確立に寄与した。近年は関係各国の要望や日本政府の方針に沿い、主として寄生虫・ウイルス感染症対策に関連する人材育成に取り組んだ。
保健統計: 加盟国保健統計年鑑(SEAMIC Health
Statistics)の継続出版とともに、人材育成事業も積極的に行った。また独自の研修用テキストを企画出版した。
栄養改善: タイ東北部における栄養改善プログラムへの協力。ブルネイの栄養調査実施前後の技術協力による第一回国民栄養調査の成功。フィリピンへのコン
サルテーション業務。
文献情報: 長年にわたる各国拠点医学図書館・医学情報センターへの情報サービス(無料文献複写、検索)業務、医学雑誌・図書、パソコン及び医学データ
ベースの寄贈プログラムによる図書館・情報センターの機能向上。ASEAN地域内協力のためのツールとなる各種目録の編集出版、関係要員の訓練育成によ
り、各国での自助努力を可能とし、地域内協力を促進した。電子文献複写サービス(有料)による最新医学情報の提供。
3.これまでの学校保健分野に関連した取り組み
学校保健分野での協力はほとんど実施していないが、しいて挙げると、タイの学校給食プロジェクトの事前準備に対する情報提供と、日本人児童の戦前戦後の
体格の差異に注目した専門家チームの国内受入れ。
フィリピンのバランガイ・ヘルス・ワーカーへの訓練を通じた学校児童の栄養教育。
4.もし学校保健分野に関連した取り組みに参画するとすれば−
当方でプログラムを実施してきた上記関係国に限って、関連分野の人脈を有するところがあるので、必要であれば事前の調整段階でお手伝いできることがある
かもしれない。
5.今後の取り組むべき国際教育協力
日本にとって民族的価値観や文化的にそれほど差異がないアジアの国々で進めるほうが良いと考える。特に東南アジア諸国においては他の地域と比べて効果が
挙げやすいとも考える。
国際協力は原則として相手国の要請に基づくものである。しかし相手国が必要とするものが、技術的にも財政的にも日本側にとって協力可能である保証はな
い。過去のSEAMICプログラムにおいても、日本側に係る専門家がいないか極めて不得手な分野のものがあり、相手国は米国や英国に技術援助を依頼した場
合がある。もし可能であれば現地側の希望する(現地での真のニーズとは限らない)協力分野において、日本側が協力出来うるものであれば、概ね順調にプログ
ラムが進められると推察されるが、もし日本側の志向するものと、現地側の希望するものが違う場合は、インテグレートされた二本立てのプログラムを考える
か、現地側の希望するものに対しては、資機材の提供といったハード面の援助も考慮し、代わりに日本側の実施するものへのサポートをお願いする必要があるか
もしれない。
回答者13 T.M
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
国際協力・援助ではありませんが、ラオスにおける蚊媒介性感染症の疫学的調査研究の一部として住民のマラリアに関連する知識、態度、保健行動などについ
ての面接調査に参加しました。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
上記の調査の成果として、児童の栄養不良とマラリア感染の関係および住民のマラリア関連知識と学歴の関係を示しました。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
上記の調査の一部として、児童の栄養不良を身体測定値から推定しました。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
現在のところ不可能ですが、将来的には児童生徒の行動疫学調査とデータ解析が可能と思います。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
地域によって異なりますが、現在のところ栄養不良、感染症予防が主になると思います。しかし、今後は肥満をはじめとする生活習慣病予防のために、栄養・
運動などの行動変容が重要視されると思いますので、わが国で行われているような行動科学に基礎をおく健康教育が必要となるでしょう。
回答者14 S.P
1.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
タイの活動で、翻訳などに協力すること。
2.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
最近、日本人がよくいろんな国にてボランティア活動をしていますが、このようなボランティア活動が民間レベルで出来る国際協力だと思います。ただし、準
備活動として、その国の人や文化・習慣を理解する活動が大切だと思います。また、様々な面で資金援助がされているようですが、先進国として資金援助は重要
なことと思いますが、知識または技術を提供できる人も同じように重要だと思います。そのためにも現地の人とコミュニケションを出来るように現地語の習得や
調査事前が準備段階で重要と思います。
回答者15 T.H
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
日本医師会は、ネパール王国政府の要請を受けて、1992年より都会から離れ医療に恵まれない農村地域における公衆衛生活動を実施している。プロジェク
トオフィスはカトマンズ郊外のジャワラケルにある。学校保健活動に加え、婦人識字教育、疾病対策、保健従事者育成といった地域保健活動を併せて実施し、学
校と地域の両面でのヘルスプロモーションを進めていることが特徴である。これらの活動を統括するプロジェクトリーダーとして国際協力機構(JICA)の協
力のもとで、学校保健並びに地域保健の専門家を2名派遣している。
学校保健活動には、チャイルド・イニチアティブ・プログラム(CIP)と学校環境改善プログラム(トイレ・水供給の整備)の2つがある。CIPは
Child-to-childアプローチを基盤としている。子供クラブを形成し、その活動を教師、そして地域住民からなる学校運営委員会がサポートできる
よう、技術的支援を行なっている。
婦人の保健活動が地域に与えるインパクトは大きく、このことから婦人への識字教育を実施している。基礎、実践の2つの識字教育を導入した後、保健知識の
向上や婦人自助グループの形成・運営を支援している。婦人グループでは健康的な食生活のための家庭菜園作りやグループ内での共済活動、地域の保健ボラン
ティア活動等を実施するよう支援している。
地域の疾病対策として、ヘルスポスト(村落診療所)の整備強化と共に、住民への栄養教育、下痢症、急性呼吸器感染症の予防・治療、ヨード欠乏症やマラリ
アのヘルスプロモーション活動を実施している。
保健従事者育成としては、村落診療所に勤務し地域の保健医療に従事する資格取得のための奨学金支給や、村人にとって身近な伝統呪術医、助産婦への西洋医
学知識研修などを実施している。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
対象地域では、2000年までに103校の対象校全てにおいてCIP活動が開始され、学校トイレ・水供給設備の設置もなされた。当初これらの活動はほと
んどなされてなかった。また疾病対策として、寄生虫保有率が98年には66%であたのが、2001年に14%に低下した。またプロジェクト開始当初14%
だった対象地域の婦人の識字率は2002年までに50%に達するなど成果が出てきている。一方、このプロジェクトは、ネパールで総合的な学校保健を導入し
た希なプロジェクトであり、フィールドでの活動と共に、関係省庁、国際NGOや現地NGO等に対してアドボカシー活動を実施しその普及に努めてきた。その
結果、ネパールにおいて学校保健の認知度は高まっており、ネパール政府も2000年に保健省内に学校保健部門を設置するまでに至っている。現在保健省で
は、学校保健の普及を目指し、ネパール各地に設置したモデル地域において日医型の学校保健プログラムの試験実施の検討が進められている。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取組みがありますか。それはどのようなものですか。
1の回答をご参照下さい。
4.あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
当会の学校地域保健プロジェクトは本年で2004年6月にネパール保健省との活動協定が満了するため、現在2004年6月以降の活動のあり方について検
討中である。しかし、この活動が学校と地域を動員した持続可能な地域保健活動として、保健衛生環境の整っていない地域において広く活用されその地域の住民
の健康状態の向上に貢献できるかたちが望ましいと考えている。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
国際教育協力が必要な国において、教育を受けることに対する社会の理解が乏しいことが多いかと思う。即ち、そうした環境における活動のゴールとしては、
指導者の人材育成だけではなく、教育を受けることに対する理解の裾野を広げることにあるだろう。その際に、日本のこれまでの学校教育の経験といった人材育
成のシステムやノウハウが生きてくるのではないかと思う。そうした日本の経験を、協力を受ける側にとって維持しやすい形に調整して活用することが肝要かと
思う。
インタビュアー 市村國夫 熊本大学教授
回答者21 K
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか?プロジェクト名称、その目的、活動内容、期間、渡航頻度、構成
員、活動資金の拠出機関などについてお答えください。
プロジェクト名称:ザンビア国ルサカ市プライマリ・ヘルスケアプロジェクト
目的:
急激な人口集中が進み、医療体制の改善、強化が緊急課題となっているザンビア国の首都ルサカ市の地域保健強化・向上。回答者の派遣目的は、プロジェクト
終了時に実施する量的・質的評価調査に係る技術指導。
活動内容:保健省ルサカディストリクト保健管理チームと連携し、保健・予防教育の普及、急性下痢症の対策、周産期ケア、ヘルスプロバイダーへのトレーニン
グ等を実施。回答者の活動内容は4名の長期専門家の各担当分野(保健教育、環境衛生、リフェラル・システム、学校保健)における終了時評価のための量的・
質的調査活動全般において、補助と調整を行うことであった。
期間:2001年8月20日〜9月27日(5週間)
渡航頻度:1回
構成員:JICA長期専門家、短期専門家、現地保健省スタッフ、現地ヘルスボランティア、AMDA
活動資金の拠出機関:JICA
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力、援助の成果はどのようなものですか?達成出来なかった目標はありますか?また、その障害はどのようなこと
ですか。
成果:
パイロット地区における住民参加型のプライマリ・ヘルスケア活動を実践することによって住民の衛生環境(特に水と栄養)に関する知識、態度、行動の変容
が確認された。その成果の一つとしてパイロット地区のコレラ発生率が激減した。また、パイロット地区における効果的なリファレルシステムの構築、ヘルスセ
ンターの再訓練、医療機器のメンテナンス技術の向上など、医療技術の支援を行った。回答者が関わった部分として、プロジェクト終了時にその成果、有効性、
問題点等について評価を実施した。評価者は一般住民、ヘルスボランティア、コミュニティヘルスワーカー、ヘルスセンターの医療関係者、保健省スタッフ、
JICAスタッフと多岐にわたり、それにより、より客観的かつ包括的なプロジェクト評価を実施することができた。
達成できなかった目標とその障害:
プロジェクトで達成できなかった目標というより、現地で発生した問題点はいくつか挙げることができる。例えば、現地の医療スタッフをトレーニングして
も、別の地域や(例えば給料が良い)他の病院に移ったり、トレーニングを受けること自体が目的化してしまい(トレーニングを受けると謝金が出る)、現場で
働くよりも様々な援助協力国・団体のトレーニングを受けることに時間を費やすスタッフが出てきた。また、治安が不安定なため、短い距離であっても移動は常
に自動車を利用することが義務付けられ、活動に支障を来たす部分があった。また、プロジェクトの性格上(プロジェクト方式技術協力)、自らが活動するとい
うより、現地スタッフと連携を取って技術を伝えながら活動していくため効率の悪い部分も見受けられた。
3.あなたが実施してきた国際協力、援助のうち学校保健分野に関連した取り組みはありますか。それはどのようなものですか。
現地のパイロット地区における学校保健活動に関する指導、助言。水道設備の整備。石鹸を実際に作成してもらい、学校で利用。
4.あなたは学校保健分野での国際協力、援助に参画することは可能ですか。その分野はどのような分野ですか。
児童生徒に対する健康教育、プライマリ・ヘルスケアの実施
回答者22
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか?
プロジェクト名称、その目的、活動内容、期間、渡航頻度、構成員、活動資金の拠出機関などについてお答えください。
海外で実施したわけではありませんが、International Union for Health Promotion and
Education (IUHPE)のNorthern Part of the Western Pacific
RegionのWWWホームページ運用をサポートしています。
おもな活動内容としては、IUHPE本部と連携を取りながら、ホームページの更新を行っています。
活動期間は、以前からずっとです。(いつからかは正確に覚えていません)
渡航の必要はなく、随時E-mailで連絡をとります。
更新作業をするのは私一人ですが、当然Vice-President(江口篤寿氏:筑波大学名誉教授)、事務局長(守山正樹氏:福岡大学教授)とも意見
交換をしています。
活動資金はありませんので、茨城県立医療大学・人間科学センターのWWWサーバから情報発信をしています。
2.
あなたがこれまでに取り組んできた国際協力、援助の成果はどのようなものですか?達成出来なかった目標はありますか?また、その障害はどのようなことです
か。
この地域は、日本人の会員が大半でしたが、徐々に韓国、香港、中国などの会員も参加するようになりました。それに併せて、各国の言語表記のページを作成
する計画です。(現在は、英語のページのみです。)
障害としては、私が韓国語や中国語を理解できないことです。また、各国の言語の打てるワードプロセッサーを入手することでしょうか。(おそらく入手でき
ると思いますが)
3.あなたが実施してきた国際協力、援助のうち学校保健分野に関連した取り組みはありますか。それはどのようなものですか。
ヘルスプロモーション、ヘルスエデュケーションの内容ですから、その一部は学校保健分野にも関連します。
4.あなたは学校保健分野での国際協力、援助に参画することは可能ですか。その分野はどのような分野ですか。
とりあえず、現状の活動は今後も継続してゆきます。
回答者24
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか?
プロジェクト名称、その目的、活動内容、期間、渡航頻度、構成員、活動資金の拠出機関などについてお答えください。
国際協力を目的に行ったものではありませんが、文部科学省科学研究費の助成を受けて、平成12年度から平成15年度まで、ブラジルの東北部に居住する日系
ブラジル人の健康調査を行いました。実際に渡航したのは、平成14年、平成15年の2回です。構成員は、3名です。
目的は、戦後の新しい移民が比較的多いブラジルの地域において、日系移民がどのようにブラジル社会に適応し、食生活や仕事など様々なライフスタイルが異
なる異文化社会で心身の健康問題を抱えていないか、明らかにすることでした。
その結果、肥満の問題、医療保険の未加入の問題、経済的な問題が明らかになってきました。その結果を、レシーフェ市にある日本領事館の領事等と懇談を行
い、日系人の健康問題等について、意見交換を行いました。また、日系コミュニティの代表者や医師にも、調査データを報告し、今後のあり方について参考資料
としてもらいました。
2.
あなたがこれまでに取り組んできた国際協力、援助の成果はどのようなものですか?達成出来なかった目標はありますか?また、その障害はどのようなことです
か。
どのような効果を上げるかは不明です。
3.あなたが実施してきた国際協力、援助のうち学校保健分野に関連した取り組みはありますか。それはどのようなものですか。
援助ではありませんが、愛知県に来ている日系ブラジル人の児童生徒を対象としたストレス調査を行い、今後増えて来るであろう日系人の児童生徒の健康問題
の解明に取り組んできました。彼らは、日本の教育行政の枠組みの外にあるため、日本語教育等の取り組みは一部でありますが、健康に関してはほとんど援助を
受けていない状態です。彼らの精神健康の問題は、親の就労の問題と密接に絡んでいるため、学校と地域、職域を合わせた取り組みが必要であると考えていま
す。国内での国際化の問題であります。
4. あなたは学校保健分野での国際協力、援助に参画することは可能ですか。その分野はどのような分野ですか。
北アメリカでも同様ですが、ブラジルの日系人は食生活のせいか、肥満が多く、塩分摂取の過剰、野菜摂取の不足など健康習慣、健康意識の問題があると思わ
れます。この問題は日系人に限りません。さらにブラジルでは、エイズの問題もあります。十分に調査したわけではありませんが、このような健康教育は学校で
十分に提供されていないように思われます。このような援助が必要であるように思いました。
回答者25 O
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか?
プロジェクト名称、その目的、活動内容、期間、渡航頻度、構成員、活動資金の拠出機関などについてお答えください。
ケニヤ人口教育促進プロジェクト
子どもの妊娠等を抑制するための健康教育プログラムの開発、実施
家族計画のための健康教育. 小学5、6年生と母親対象の教育内容及び教材(教科書)の開発・検討
7ヶ月間. 3名(健康教育専門家、社会教育専門家)、 JICA
2.
あなたがこれまでに取り組んできた国際協力、援助の成果はどのようなものですか?達成出来なかった目標はありますか?また、その障害はどのようなことです
か。
上記のプロジェクトに参加したことのみ
3.あなたが実施してきた国際協力、援助のうち学校保健分野に関連した取り組みはありますか。それはどのようなものですか。
上記のプロジェクトは学校における健康教育の内容、方法などに取り組んだものである
4.あなたは学校保健分野での国際協力、援助に参画することは可能ですか。その分野はどのような分野ですか。
学校保健の分野であれば広く対応することは可能
インタビュアー 家田重晴 中京大学教授
回答者26:T.H (C大学大学院)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
1997年7月より1999年8月まで、青年海外協力隊員(体育隊員)として、アフリカ南部に位置するジンバブエ国に派遣されました。
現地では、マゾエハイスクール(日本では中・高等学校と同じ)にて、体育を担当しました。体育の授業のほかには、バドミントン部の顧問やサッカー部の指
導も行いました。マゾエハイスクールでの授業数が少ないこともあって、近くのピアソン小学校での体育の授業も担当しました。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
ジンバブエでは、体育・音楽・美術といった情操教育より、数学・英語・理科などの教科が重視されています。というよりも、体育などがほとんどの学校で取
り入れられていませんでした。当然、体育教師などを育成するところありません。それでも教育省はシラバスを作成しており、徐々に体育が行われ始めたという
年だったと思われます。そのような状況で、人材不足の高等学校に一体育教師として派遣されたことは、学校側にも私自身にとっても有益であったと考えます。
具体的な成果に関しては特にありませんが、あえて言えば、体育を通じて日本文化を紹介できたことが成果であったと思います。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む)に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなものでし
たか。
食事の内容が、高脂肪・高カロリーであり、特にある程度所得のある世帯の女性の中高齢者に肥満が多いのではないかと思われました。私の配属先の高校で
も、体格を気にする教師が数名おり、その人たちの要望でエアロビクスを放課後の空き時間で実施したことがありました。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
私自身が学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能です。実際に現地に行き、体育や健康指導などを実施することは可能だと思います。ただ
し、英語圏ならばそれほど問題ないでしょうが、他の言語を使用している国となると通訳が必要だと思われます。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
青年海外協力隊の目的は、草の根レベルの支援であり、派遣地域において自分たちの技術などを伝え、その地域の文化や習慣を学ぶことでした。私自身、この
目的に強く賛同しております。何か物資を提供することも重要な協力だと思われますが、教育を実施するのは教師であり人であると考えます。日本の教育方針を
どれだけの国が受け入れてくれるのかは分かりませんが、教員育成を目的とした協力が大切ではないでしょうか。
回答者27:K.K (C大学)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
国際交流基金からのスポーツ科学専門家派遣であった。相手はタイ国文部省体育局で、
1回目は1985年10月から1986年3月、2回目は1991年4月から5月であった。業務はタイでのスポーツ科学振興策の立案、体育局下にある体育短
期大学での講演・体力測定、児童やスポーツ選手の体力測定、タイ人の発育発達に関する現状のまとめなどであった。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
スポーツ科学専門家として私の前に赴任した日本人がいたが、専門がスポーツ指導であったために、私が行ったときにはスポーツ科学の専門家として待ち望ん
だ人物だ、とお世辞を言われた。直接に仕事に関連する成果は別添の「タイ王国体育学事情TとU」を参照していただきたい。(「体育の科学」、36:758
-760、1986、及び「体育の科学」、36:841-844、1986)
これとは別に人物交流と日本からの経済援助に成果を挙げた。私の後任として、バイオメカニクスの専門家の派遣を要請されその人選を行なった。そして中京
大学から湯浅景元教授、名古屋大学から桜井伸二助教授(現、中京大学教授)がバンコクに赴任した。この流れはさらに波及効果を生じ、マレーシアからの派遣
依頼が私に来た。しかし、これは断り富山医科薬科大学の小野寺孝一助教授(現、教授)を推薦し、国際交流基金から小野寺助教授が赴任した。この流れでマ
レーシア科学大学からわが研究室に教授と大学院生を客員として受け入れている。また、タイからは、私が主催する学会大会にて二人の助教授を招待講演に招聘
し、一人の教授を招待した。
また、1度目の赴任時に、日本からのスポーツ関連の無償供与を受けたいとの依頼を受け、日本各社と連絡を取り日本の文部省宛の書類を作成し申請した。こ
の申請は受理され、5000万円の援助を得た。それまでのこの援助はスポーツ器具が対象であったが、運動生理学、バイオメカニクス、医療関連の機器での援
助は初めてであると国際交流基金のバンコク事務所から言われた。2度目の赴任をした際に、私のいた建物の2階全部にこうした機器が展示されていた。しか
し、問題は実際の測定に用いていないことである。故障した際の修理費が出せないとのことであった。したがって、専門家の研修には見せるだけ、とのことで
あった。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む)に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなものでし
たか。
私の受け入れ先は、体育局の中での健康関連部局であったが、体力や一般人への運動指導についての講演を体育短大の教員を対象に行なった。一方、別添にあ
るように小学生の体力を測定した。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
体力に関連する事業に参加できる。ただし、現場的な運動指導ではなく、専門家の養成事業についてである。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
考えられる対象が多様であるため、この質問には答えようが無い。私の経験に従って返答をすれば、研究者の受け入れであり、わが国からの人材の派遣であ
る。体力に関する研究は世界でも限られた国、地域でしか十分な展開はされていない。東南アジアに限って言えば、その発展はこれからであり、またその土壌が
整いつつあることから大いに期待できる地域である。
回答者28:S.S (C大学)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
1989年7月10日から8月10日の1ヶ月間、タイ国文部省体育局に滞在して、小学生児童の体力測定の実施、そのデータ処理、評価基準の作成などにつ
いて協力した。行われた体力測定は垂直跳びなど日本の体力診断テスト(当時)に相当するものであった。(この滞在の数年前に、私自身がタイ国児童の投球動
作の発達に関する調査(=動作の撮影)を行いたくて、国際学会で出会った体育局の係官(副局長であったと思う)にお願いした。
その結果、私の興味のためということではタイ国政府は私を招聘することはできないが、先方が必要な作業について私が協力し、その滞在中に時間的に可能な
ら私の実験も行ってよいという約束で滞在した。実際には撮影用カメラの通関に時間がかかり、税関を通過したのが帰国の数日前で、私自身の実験はできなかっ
た。)
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
各項目について、その得点分布から体力の5段階評価表を作成した。しかしながら滞在中に測定できたサンプル数が十分ではなくあまり信頼性が高いものとは
いえなかった。測定および処理の方法だけは現地の職員に理解・習熟してもらい測定を継続してもらいたいと思った。当時はパソコンが普及し始めた頃で、日本
の大学院で修士課程を終えた職員がパソコンを1台持ち帰っていた。それを使いながら、パソコンの使用法についても説明した。しかしながら、その後現地から
は何も連絡がなく、残念ながらその場限りの測定と処理になってしまったものと思われる。実際には、実務にあたる職員と指示する上司のそれぞれの意欲の間に
は大きな差が感じられ、大きな成果はあがらないのではないかと滞在中から既に危惧していた。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む)に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなものでし
たか。
上述した通り。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
現状の勤務状況を考えると困難である。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
経験が少なく、あまり根拠ある意見を述べることはできない。そこで当時感じたことを書くことで代えたい。上述の数少ない経験の滞在時には、実務者(公務
員であった)の意欲の低さを痛感させられた。ただ、勤務時間なので職場にいて、上司に言われたから仕方なくやっているという感じであった。その後、同じタ
イ国で学生や若い教員を主対象としたワークショップで講習を行うため、2週間ほど滞在したことがある。この際には参加者の大変な熱意を感じた。他の発展途
上国でも同様の現象が見られると聞く。すなわち、学生時代までは大変熱意があって勉強に励むが、いったん公務員の職に就いたとたん、上級職の場合には管理
的な仕事ばかりが増えて現場のニーズや現状が把握できなくなり、また下級職の場合には生活が保障されたという安心からか職務に意欲を失ってしまいがちであ
るという。どのような方法が良いのかはわからないが、特に国の政策方向を決定付ける立場である公務員の勤労意欲を持続させられるような協力であればと思
う。
回答者29:O.K(T大学)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
国際交流基金の依頼で、マレーシアにてスポーツ科学の指導に当たりました。対象は大学生と大学の教職員、研究機関のスタッフが主たるところでした。大学
はクアラルンプール市内にある3大学、その他1大学で、研究機関はマレーシア青年スポーツ省(?)の付属のナショナルスポーツカウンシル、その他教員の再
教育機関等で講演や研究実施の具体的方法の指導、及び実施がその内容です。活動場所の選定、調整は青年スポーツ省のスタッフが行いました。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
体力測定機器や安価な計測機器は国際交流基金が私の要請により準備してくれました。その後、私的に心電図テレメーター等を送りました。
その後の状況を把握しておりませんので、正確なことは言及できません。しかしながら、青年スポーツ省はその後に新しい研究機関を設立していますし、大学
の1スタッフは小生の下に研究留学に来ております。多少のスポーツ科学に対する意識改革に影響したのではないかと考えております。マレーシア政府の考えは
知ることができませんが、日本と比べ教育や研究分野に必要物品がないので実態としては進歩の度合いが遅いように思われます。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む) に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなもので
したか。
学校保健分野への取り組みはありません。訪問して生活の実態を見、さらに平均寿命等を考えると、スポーツ科学より保健分野での支援や意識改革、衛生環境
の改善が優先されて当然のように思います。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
参画できる分野は少ないと思います。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
国際教育協力という観点でどのようにすべきかわかりません。スポーツの分野では数人の研究者が海外に留学しており、また海外からの研究者も招聘している
ようです。
関係者の意識レベルは向上していると考えられますが、行政担当者がどこまで理解して背策として反映させるかが問題のように思われます。特にマレーシアは多
民族国家であり、表面上は穏やかに見えますが、宗教や文化の違いやおかれている経済環境、社会的地位の格差等が壁になっている点も多いことがわかりまし
た。人種、宗教、文化を尊重しながら協力を進めることが大切に思われます。
回答者30:O.H (A大学)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
(1)1992〜93年度、科学研究費補助金(国際学術研究)「南インドにおける乳が
んの発生要因についての疫学的研究」の共同研究者
(2)1994年度、科学研究費補助金(国際学術研究)「南インドにおける多発癌の発生要因についての疫学的研究」の共同研究者
(3)1998年度〜現在に至る(継続)、JICA(国際協力事業団)「地域がん予防対策研修コース」研修講師
(4)2000年度〜現在に至る(継続)、JICA(国際協力事業団)「生活習慣病予防対策研修コース」研修講師
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
(1)(2):インド・マドラスがん研究所との共同による乳がん、胃がん、肺がんの症例対照研究を行った。インドの共同研究者を日本に招聘して、標本試料
の分析技術の移転も行った。研究成果はインドの共同研究者が主体となって国際学術集会および国際学術雑誌に発表した。
(3):平成10年度から6年間にわたって発展途上国33か国52名の医師、保健師、保健衛生行政官を対象に、研修講師チーム(私もその一員)が約1ヶ月
半にわたって、がんの疫学および予防対策について情報交換・学習・アクションプランの作成を指導している。研修は名古屋市内のJICA研修所を中心に行
い、大阪市、広島市などの訪問施設でも行う。参加研修員は研修後に各自の職場で「がん予防活動」を展開している。
(4):平成12年度から4年間にわたって発展途上国13か国29名の医師、保健師、保健衛生行政官を対象に、研修講師チーム(私もその一員)が約2ヶ月
間にわたって、生活習慣病の予防対策および健康づくりについて情報交換・学習・アクションプランの作成を指導している。研修は愛知健康プラザを中心に行
い、大阪市、広島市などの訪問施設でも行う。参加研修員は研修後に各自の職場で「生活習慣病予防活動」を展開している。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む)に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなものでし
たか。
上記の(3)(4)では青少年を対象にした喫煙、飲酒、運動、食事、ストレスに対する予防対策プログラムがきわめて重要であり、研修プログラムにもそれ
らのテーマが盛り込まれている。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
青少年の喫煙、飲酒、運動、食事、ストレスに対する教育・予防対策プログラム。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
子供と女性(次世代に大きな影響を及ぼす)を対象にした保健教育プログラム。
回答者31:O.Y (N短期大学)
1.これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助は、どのようなものでしたか。
パナマ共和国で首都から最も離れた県のひとつにある国立病院に保健師として配属された。ここで現地の医療職スタッフ(看護職、ヘルスワーカー、医師)と
ともに、院内および病院の管轄地域への巡回における予防接種、健康診断、健康相談などの業務に携った。また、これらの活動の経験を通して、低体重児のいる
家族への訪問、先住民が居住する村落における健康教育などの取り組みに必要性を感じ、これらの活動へ広げていった。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果は、どのようなものですか。
赴任当初、私自身の言語や文化・習慣面、医療・保健現場の実情において知識・経験ともに課題があり力不足であった。配属機関の受け入れ体制としても、職
場環境だけではなく居住環境も整っているとは言えない状況であった。さらに、業務の確実な計画が存在しなかったり、予算を伴う新たな事業を計画し実施する
ことの困難など、日本とは事情が大きく異なり、活動の進行には想像以上に時間がかかった。このような現状から、2年間という活動期間は決して十分と言える
ものではなく、住民やヘルスワーカーに対する教育の効果が現れるには至らなかった。
3.あなたが実施してきた国際協力または援助のうち、学校保健分野(健康づくりを含む)に関連するような取り組みがありますか。それはどのようなものでし
たか。
特になかった。
4.あなたは学校保健分野での国際協力または援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
場合によっては可能である。内容としては、児童・生徒や教師を対象とした健康教育が考えられる。
5.あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものだと考えていますか。
配属機関であった病院の管轄地域には、黒人系・混血の人々と先住民が居住しており、病院のスタッフの人種は、ほとんどが混血もしくは黒人系であった。ス
タッフとともに活動する中で感じたことの一つに、医療者の患者・住民に対する言動が、混血・黒人系に対する場合と先住民に対する場合とでは全く異なること
が挙げられ、異民族間の関係の難しさを考えさせられた。これは双方の気質の相違によることも考えられるが、これまでパナマが経た長い歴史とも深く関わって
いる。先住民が抱えるあらゆる問題(健康の問題も含めて)へ目を向ける非先住民はほとんどなく、先住民を同じパナマ人であるという意識はないように感じる
こともあった。先住民の村落における活動の場合、非先住民より全くの部外者である私の方が入って活動しやすいのでは、と感じることもあった。その国の課題
は、現地の人々の手によって解決していくことが望ましいと考えるが、ひとつのきっかけとして外国人が果たせる役割もあるのではと思われる。また一つの国の
中とはいえ生活や経済的格差は大きい。国際協力は、裕福な人々をますます裕福にするのではなく、貧困層、社会的弱者の生活の向上につながるものであること
を切に願う。また、物資やお金を贈ることに頼らない方法が望まれるのではないだろうか。
インタビュアー 笠井直美 新潟大学助教授
回答者32 K.K (N女子短大)
1. これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
2. あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
残念ながら、上記3つの実績はない。
4. あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
可能である。健康と栄養・食生活分野および学校給食関連について、機会があれば多角的なアプローチができると考えている。
5. あなたは、我が国が取り組むべき国際教育協力はどのようなものと考えていますか。
それぞれの国の実態を踏まえ、その特殊性を尊重して生かせるようなサポートである。従来の押しつけ型ではないことが重要だと考える。
回答者33 K.T (S大学)
1. これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
ヴァヌアツ共和国におけるスポーツの普及活動である。とくにサッカーのデヴェロップメントの実践を行ってきた。
2.あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助はどのようなものですか。
ご存知のように教育関係の援助は、長期的な展望のもとで測られるべき事象であるので、「成果」と問われた場合、一口に回答するのは大変難しい。どのよう
に回答すればよいか苦慮している。
3. あなたは学校保健分野での国際協力・援助に参画することは可能ですか。可能だとすれば、それはどのようなことですか。
こちらの時間的な都合がつけば、もちろん可能である。参画可能な分野として、スポーツ振興政策や健康の啓発活動の領域が考えられる。
回答者34 K.N (株式会社D)
1. これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
株式会社D(国際局)の業務の一環として、自立のための農業に関する情報交換に関わる取り組みを1年に2回(1週間程度)ほど実施した。
対象国は、韓国、タイ、インドネシア、スペインである。
2. あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
インドネシアでは、バリ島のスバック(水利組合)による水の権利および管理に関わる情報を得た。伝統的な組織管理システムの維持について知ることは、他
の途上国にとって応用が可能になる点であると考えられた。
タイでは、サコンナコーン、コンケーン、チェンラーイ県のホウェイナムクン村(ラフ族)等にて活動を行った。内容としては、タイのNGOが取り組んでい
る、農業における化学肥料使用の削減、自給自足への支援活動に関わる共同活動などがあげられ、お互いの活動の動機付けに対しても有効であった。サコンナ
コーンには、「篤農家」という存在があり、村民からの信頼が厚い人物が指導的立場をとり、農業を中心とした集団が形成されていた。農業における様々な活動
に対して非常に有利な集団であることがわかった。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
援助・共同作業の対象者は村民であったため、学校保健分野に直接は関連していない。しかし、村民は学校に行っている子どもの保護者である場合がほとんど
なので、子どもたちは保護者を通して何らかの知識、情報、態度等の影響を受けていると思われる。また、村人および学校関係者の農業による学校給食への支援
の可能性があることが、今回のインタビューによりわかった。
4.あなたは、我が国が取り組むべき国際協力はどのようなものと考えていますか。
たとえば、医療協力の場合であるならば、村民への不十分な教育は逆に村民を混乱させる原因になると考えている。乳幼児の発育を体重などで一律にチャート
のみで評価することは、貧しい村では不可能に近い。豊かな環境で育てられた子どものデータと比較して、援助対象となっている村人の子どもの発育が不十分で
あると一方的に指導されても、村人は非難としか受け取らないのかもしれない。従って、文化的、経済的背景を無視してのプロジェクトは充分な成果がえられな
いか、成功することが難しいのではなかろうか。基礎となる健康教育を充分にした後の支援であることが、混乱を招かない一つの方法であるように考えている。
回答者35 S.C (N大学)
1. これまで、あなたが海外で実施してきた国際協力または援助はどのようなものでしたか。
1991-93年 バヌアツ共和国 JICA青年海外協力隊にてマラリア対策援助活動。
1995-96年 博士論文のための調査活動兼マラリア対策援助活動。
研究課題:ヴァヌアツにおける伝統文化の現代的動態に関する文化人類学的研究
論文:『ヴァヌアツ・トンゴア島民の病因論からみた都市−邪術の存在論との関連で』、単著、2000.12
◎熊谷圭知・塩田光喜編、都市の誕生−太平洋島嶼諸国の都市化と社会変容、アジア経済研究所、pp.183-217
バヌアツ共和国 (2003年11月現在)
1.面積:1万2,189km2 2.人口:20万人(01年世銀) 3.首都:ポートビラ(1.9万人、98年) 4.人種:メラネシア系93%、英仏
人2%、中国系、ベトナム系等 5.言語:公用語はビシュラマ語(ピジン英語)、英語、仏語の3つ 6.宗教:殆どがキリスト教徒
2. あなたがこれまでに取り組んできた国際協力・援助の成果はどのようなものですか。
マラリア対策援助活動としての村民へのマラリアに関する啓発活動ならびに知識の普及活動。蚊帳使用の普及および奨励活動等。成果の評価は難しいが、成果
がなかったとは言えない。3の項目について、関連して述べる。
教育関連情報として、識字率は約80%である。よって識字率の低さによる情報の理解力不足等の問題は少ない。義務教育は小学校6年間であるが、完全無償
ではないため、脱落する者が多い。使用言語は英語と仏語が主である。
3.あなたが実施してきた国際協力・援助のうち、学校保健分野に関連した取り組みがありますか。それはどのようなものですか。
援助活動の対象者は村民であったため、学校保健分野への直接の関与はしていない。しかし、村民は学校に行っている子どもの保護者である場合がほとんどな
ので、共有している生活の場でマラリア対策を実施している以上、全く無関係ではないであろう。
以下、学校保健分野における可能性を記す。
【マラリア対策】
成人はマラリアに関する衛生知識をほとんどもっていない。よって、学校における健康教育の必要性を強く感じる(教育効率の高さ、コスト面から判断しても
有効)。
成人に対する衛生教育は保健省、病院、保健所によって行われている。Ex.
保健省マラリア対策課によるラジオ(TVは無い)でのキャンペーンが週に2回ほど実施されていた。
村民はマラリアの名前を知っているが、重症度(恐さ)の認識がない。蚊によって媒介されることは理解している。しかし、原虫という概念が存在しているよ
うには思えず、おそらく蚊が泥水を吸い込み、その泥が吸血される時に体内に入り込むような理解をしているのではないかと考えている。
危険性を理解している場合でも、蚊帳を使用する等の予防行動は面倒というような理由から実際には行わない。
診断が遅れることが多いので、症状が軽減してから病名を告げられても実感が湧かない。
【学校で実施されている活動】
保健省から採血キットや治療薬が配布されるところもある(Aid Post)。
マラリア罹患が疑わしい児童に対して、学校にいる看護師(必置ではない)やクラス担任等が採血する。診断前にマラリア罹患が疑わしい時点で支給されてい
る抗マラリア薬もしくは自分の治療薬のストック分を投与(マラリアの薬剤耐性が高くなる要因の一つ)する。その後、血液を保健所に送付。マラリア検査が実
施される。その結果が学校へ通知される(通知しないこともある)。
上記のような経緯が原因となって、教育効果が非常に低い。
その他にも、教員数の絶対的な不足および指導力不足に問題がある。
都市と地方の格差が大きい。たとえば、都市部にある、外国からの教育支援にて外国人教員が在籍している学校へは、経済的に豊かな家庭の子女が通うことが多
く、人気があり教育水準が高い。
【デング熱とマラリアの差異】
人々の恐怖心は、マラリアよりデング熱が圧倒的に高い。要因として、死亡率が高いためであることが考えられる。マラリアは以前から存在していた疾病なの
で人々の危機感が低い。デング熱は東南アジアのそれに比べて症状が重く、流行間隔が長い。よって重大な疾病として受け止められている。また、以前保健省に
より、デング熱の治療薬は無いと報道されたことにより人々の危機感が高まり、教育効果が高くなった。よって、デング熱予防対策には真剣に取り組む様子が見
える。
【AIDS予防対策】
マラリア対策と比較して、人々の興味は高い。しかし、家族計画の推進が遅れており、多産傾向にあることから、学校における性教育の必要性を強く感じる。
性道徳および性行動に問題が多いためであろうか、非嫡出子が多い。これにはキリスト教との関連もあるであろう。民間避妊薬が存在し、コンドームを使用する
習慣がないなどの問題もある。
4.あなたは、我が国が取り組むべき国際協力はどのようなものと考えていますか。
たとえば、医療協力の場合であるならば、医師、看護師、保健師等の医療従事者のみの派遣で充分であるという発想は、活動の成功にとって不適切であろう。教
育、社会学、経済等の専門家が様々な立場で参加すべきである。文化的背景を無視してのプロジェクトは充分な成果がえられない、若しくは成功することが難し
いのではなかろうか。しかしながら、医療協力に文化人類学等の専門家が参加することに対して、依然として理解のない医療協力関係者が多いようである。一方
最近では、自分の理念に近い考えをもつ関係者も現れてきており、新しいプロジェクトも開始され始めた状況である。
インタビュアー 綾部真雄 成蹊大学助教授
回答者36 K.T
はじめに:政策における概念
以下では、国際協力における文化、とりわけそれが日本で政策として扱われる場合の問題性について、考えてみたい。筆者は開発協力や保健の専門家ではない
が、ある国際的な政策が決定・執行されるときに、その政策の対象となる領域を示す用語の解釈がもたらす問題に関心を持っている。近年、グローバル化に伴う
社会の変化、国際関係における民族的・宗教的要因、また日本の技術や大衆文化の国際的影響などへの関心から、さまざまな分野の政策形成の場で「文化」とよ
ばれるものに注目が集まっている。こうした状況に鑑み、ここでは、国際協力における文化の扱いについて、若干の考察を試みる。
「国際協力における文化」の多様な文脈
管見する限りでも、「文化」が「国際協力」と関連した政策の領域として現れてくる文脈には、さまざまなものがある。開発協力関係者にとって一般的に最もわ
かりやすいのは、途上国への支援における「文化的配慮」の文脈であろう。1980年代以降、とくに草の根の開発協力の現場から、開発・発展においては現地
固有の歴史・地理・宗教・生活習慣などの事情を考慮すべきことが主張されている。その際、それら特有の事情を総称して「文化」ということが多い(たとえ
ば、[ヴェルヘルスト1994])。これと関連して、日本においては、井戸掘りなど日本固有の技術を生かした途上国への開発協力が、「文化」的な協力とい
う枠組みでとらえられることもある(たとえば、[文化交流研究会 1999])。
途上国の開発だけではなく、先進国も含めた一般的な人間の発展における「文化的側面」を重視し、そうした側面を充実させるための国際的な協力を推進しよ
うとする向きもある。日本ではまだあまり馴染みがないようであるが、ヨーロッパの諸地域機関(とくに欧州審議会)やユネスコにおいては、1970年代頃か
ら「文化的発展」(cultural
development)が国際的事業のキーワードとなっている。そこでは、社会における弱者や、グローバル化によって不利益を被る人々(民族的マイノリ
ティ、女性、高齢者、青少年、障害者など)が、自分らしさを大切にしながら主体的に社会参加できることが目標とされている(たとえば、[de
Cuéllar 1996])。
もう一つ、日本ではとりわけ文部科学省や外務省などで、以上の文脈とはやや異なるかたちでしばしば言及されるのが、いわゆる「文化(教育)面での協力」
である。これら省庁のウェブサイトでは、ユネスコやOECD等の文化教育を扱う国際機関への参加や、文化財保存や芸術文化振興に関する国際的プロジェクト
への参加、あるいはそうした国際的事業を日本が実施することが、「文化教育協力」に相当するようである。ここでの「文化」は、先に挙げた開発協力における
「文化的配慮」が協力のひとつの「方法」を示しているのとは異なり、文化財(実はここにも「文化」の冠が使われているのであるが)や芸術など、協力の「対
象領域」を指している。
政策概念としての「文化」の難しさ
以上、簡単に整理しただけでも明らかなように、国際協力の政策において「文化」を扱うことには、複雑な困難がつきまとう。まず、先の具体例にもあるよう
に、文化を協力の方法として考えるのか、対象として考えるのか、という問題がある。これは、文化を広義の概念としてとらえるのか(文化人類学・社会学のア
プローチ)、狭義の概念としてとらえるのか(教養主義的なアプローチ)の違いにもつながる。
文化概念の曖昧さは、こうした認識枠組みの複数性に加え、政策関係者の間で「文化は、よいものだけれど政策上のプライオリティにはならない」という漠然
としたイメージが普及することにもつながっている。中根千枝は以前、文化概念はしばしば一般に「政治、経済、軍事などから区別される分野」として用いられ
るが、同時にそれは「(そうした分野の仕事に従事する人々が)やさしいばかりでなく発言力もない場合が多く、とかく後回しにされる分野」でもあると述べた
[中根1973:14-15]。彼女の批判は、今日の政策現場にも十分通用するであろう。
もう少し視点を変えると、「文化」が依拠する集団の枠組みについても議論の余地がある。前項で挙げた国際協力の諸文脈で扱われる「文化」の枠組みとして
は、開発や発展を考えた場合、さまざまなもの、たとえばジェンダー、セクシュアリティ、世代、障害などが、検討の対象に入りうると考えられる。しかし、実
際の政策現場、とりわけ日本のそれにおいては、文化といえばまず「日本文化」、「少数民族の文化」といったようなエスニックな枠組みが暗黙の前提となって
おり、人間社会の多様な次元にはなかなか目が向けられにくいように思われる。
最後に、より根元的な困難として、人間の集団を文化という枠で区切ったとたんに、その境界があたかも越えがたいように絶対化されてしまうという問題があ
る。本来文化の境界は曖昧であり、人間行動の意味規則は多義的で、常に変化しているにもかかわらず、それを対象化し認識しようとすると、あるひとつの静的
な集団枠組みに一元的に類型化されてしまう[関本
1988]。国際協力の現場において、本来は権力闘争や経済的原因に起因する対立や諸問題が、「文化の違い」に拠ると認識されることで解決(調停)不可能
とみなされ、放置されてしまうことも少なくないのではなかろうか。
「国際協力」の問題性
ここまで「文化」にまつわる問題を概観してきたが、「国際協力」も、実は政策用語として扱うのが難しいことばである。本来「協力」は、対等な立場にある
人々の共同作業(cooperation)であるはずだが、日本語における政策用語としての「国際協力」は、一般的には途上国への支援
(assistance)に近い意味で使われるようになっている。一方、国際機関に対する協力として「国際協力」に言及される場合は、資金の提供、あるい
は調査のためのデータの拠出などの義務を果たすことが意味されているように思われる。このような状況の下、日本で行われる国際協力はしばしば、概念本来の
意味とは異なる一方的な行動(輸出・押しつけ、あるいは、受動的対応)に陥りやすい危険性がある。
もう一つ、「国際」という冠を使用することの落とし穴も指摘しなくてはならない。日本において「国際」的な政策・事業というと、日本の外において、ある
いは、外国と共同で行うこと、すなわち対外的な活動が前提となることが多い。しかし、グローバル化が進展する今日、日本国内においても、多文化共生や人
権・環境などの諸問題が、異なる国や文化を出身とする人々との協力によって対処されるべきものとなっている。こうした「国内における国際協力」に目を向け
ることが、これからますます必要になっていくのではないだろうか。
おわりに:「文化の国際協力」を実り多いものとするために
本稿では、ごく大雑把にではあるが、「国際協力における文化」の抱えるさまざまな難しさを検討してきた。最後に、そうした概念上の困難を越えて、実質的成
果のある政策を行うために、どのような留意が必要かを整理して、まとめに代えたい。
・現在取り組もうとしている国際協力における「文化」が、具体的に何を意味しているの
か(たとえば、方法的なものなのか対象的なものなのか、後者の場合、どのような分野が範疇に入るのか)を、できるだけ詳しく思い描いてみること。
・文化を幅広くとらえること。動的な実体として、またエスニックな次元に限られない多様な次元を持つものと認識すること。
・すべての対立や問題を「文化の違い」で片づけてしまわないこと。
・常に相手の立場を考慮し、双方向の対等な関係で「協力」を行うこと。
・対外的な活動だけでなく、国内の次元にも目を配ること。
回答者37 M.N
1995(平成7)年、この年は「激動の平成」を痛切に感じさせる年であって、1月17日には阪神淡路大震災(以下「大震災」)が、3月20日はオウム
真理教による「地下鉄サリン事件」が発生した年であった。
この年は「ボランティア元年」と一般に呼ばれた年で、大震災の時に震災地域に、「助け合い精神」「ボランティア精神」の現れから、仕事や学校を投げ出し
て自衛隊が駆けつける前に重軽傷者を救出し合い、その後は仮設住宅の前でボランティア団体やそれに参加する一般市民による炊き出しが始まった。これには様
々な団体が加わり、宗教団体も力を合わせて炊き出したり、慰問をしたりした。この大震災以降、日本社会にボランティア活動旋風が舞い上がり、福祉活動と共
に「他人のためにはたらく」ということが定着し始めつつある。
そのボランティア元年から数えて今年で9年、来年で10年目の節目を迎えようとしている。オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫被告が死刑判決を受け、
これで全員が有罪にもなった。両者が節目となろうとしている現在、ボランティア等について見直される必要があるのではないだろうか。
筆者は今述べたように、ボランティア活動とオウム真理教の活動を併記しているが、これは両者が無関係ではないと考えているからである。なぜ、大震災の時
にあれほど多くの人びとがいわば政府からの命令でもなく、マニュアルも整っているわけでもないのに「身体が動いた」のであろうか。
この背後には当然95年以前から、あるいは戦前から地道な活動を継続している方々の経験知識に依存する部分が多かったのであるが、それだけではなかっ
た。ボランティア活動、オウム真理教への入信は共に「社会の既成価値への不満である」といえるであろう。
若者は自分の活躍できる場を望んでいる。また、世俗化あるいは冠婚葬祭化された伝統宗教に対する不満など既成あるいは固定した価値観に対する不満バブル
社会への不満があり両者とも満を持して沸騰した観がある。
このように若者は何処かで人のためになること、社会のために働くこと、世の中に対する不満等をぶつける場を求めていたのである。
さて、このようにして一般の人に起きた「ボランティア元年」であるが、当然勢いで始まった者の宿命として見直しも必要となる。当時は国内活動としてス
タートしたが活動範囲は海外へも向いた。この要因は様々であろうが、月並みな表現であるがグローバル化の推進と国家への不信であるといえよう。
ここで国内ボランティア活動と国際協力の比較をしてみたい。両者の基盤にある者は共通していて上記のように「人のために働きたい」という気持ちから起こ
る社会貢献であることに疑いの余地はない。しかし、国内と海外での活動にとって、相違点の最たる者は、国際協力に必要な「専門性」であろう。
国際協力とは何か、改めて問うてみたい。国際協力とは国際的に「自発的」、「無償」、「利他的」な活動をし、具体的内容としては「平和への貢献」「国際
交流」「資金援助」など行う活動で、特に市民レベルの形態では、組織力を持った国際協力NGO、それを結ぶネットワークがあるといえる。
しかも、海外での活動は国内事情とは異なり「気持ちだけ」ではない専門性が問われる。但しここでいう専門性とは必ずしも土木・医療技術・教育に限定され
るものではない。
たとえば文化交流で受益者と交流を深められる方がいれば、それを契機にその後の土木作業がスムーズに進んだり、医療活動も順調に進むケースもある。また活
動者の自己管理が必要となる。活動者が自己管理を怠れば現地において他の活動者の世話になってしまうことがある。もちろんお互いが協力し合うのは当然であ
るが、国内での準備不足の場合も見られるので、専門性と自己管理がかなり問われる。
もう1つ問われるのは、受益者・受益国の意向と活動者の意図をどう調節するかにある。当然受益者の意向を重視するというものの、活動者がその意向を理解
しきれない面もでている。現在この両者の調節もして行かなくてはならず、活動の見直しの時期に差し掛かっている。
最後に国際協力の研究について触れてみたい。筆者の場合国際協力を宗教との関係で考察しているが、研究の現状を管見ながら把握すると方法論が確立されて
おらず現地の活動状況の把握に終始している面がある。国際協力は確かに活動することが目的そのものであって、方法論の基に活動するべきでもなく、また、
「マニュアル化」できない面があるのは承知すべきであるが、専門性が問われ上記のように見直しの時期であり、来年「大震災」から10年目を迎える時期も踏
まえて、国際協力の研究方法のさらなる突き詰め、研鑽が求められていくのではないかと考える。
回答者38 A.S (S大学)
従来の国際協力はODAなどによる援助国の理念に従って、援助国の枠組みを押し付けることが多かったが、今求められるのは、援助される側のニーズをでき
るだけ引き出し、相互が対等な立場から、援助を考え、援助をする側は、される側に援助の内実をまかせることが必要である。
協力をする場合、される側の人々の人間として生きている現実に相応しい協力が必要とされる。経済的な支援だけが協力ではない。必要なことは、彼等の伝統
的な文化、地場産業等に注目して、それを活性化すると言う協力が必要であり、その限りにおいて必要な経済支援が求められる。
経済的援助や大幅なインフラの変化によって、しばしば協力される側のアイデンティティが危機に陥ることが指摘されて久しいが、このアイデンティティの問
題にもっと注目してどのような協力がアイデンティティの存続、維持、発展にとって好ましいかを考えることが求められる。従って、協力には、経済学や政治学
等の視点だけではなく、文化人類学や宗教学の視点が不可欠となろう。
国際協力における諸宗教の対話と協力が不可欠である。日本の国際協力は、この点に関してほとんど考慮してこなかった。今日の宗教は、他の宗教団体と協力
しながら、宗教の視点にたった協力を模索してきた。例えば、世界宗教者平和会議(通称WCRP)は国連の第一級NGOとして認知されているが、こうした団
体との協力を深めながら、援助される人々の信仰的世界から見て、どのような協力が望ましいものとされるかを考える段階にきてはいないだろうか。
以上から、交際協力即ち経済援助という考えを再検討すべきである。援助、協力される側の人々の生活に根ざして協力がなされるべきであり、経済的な危機の
中で、あるいは政治的混乱の中で、彼等が維持してきた生活文化のために経済的、政治的援助をすべきである。経済的に豊かになっても、アイデンティティを剥
奪され、生きる意味を変更されて、人間の尊厳を奪われるようなことが結果される協力は避けなければならないであろう。従来の協力は、こうした視点を欠落し
てきたようである。
国際協力は外国に向けられることだけではない。日本に存在する多くの移住労働者の悲惨な現実に注目して、彼等に人間として生きる権利を与えることこそ日
本国内における国際協力である。このためには、国内法の改正が必要であり、また彼らを正当な市民として理解する倫理的視座が求められる。