学校環境衛生に関する課題
金沢大学 佐川哲也
学校環境衛生は学校保健分野における重要な領域である。拠点システム事業(学校保健分野)の初年度の取り組みとして、これまでの研究成果を基にして、今
後国際教育協力に当たって取り上げるべき項目を選定することを目的として取り組んだ。すなわち、学校環境のどこに注目して点検整備を進めていけばよいかに
ついて検討することが今年度のねらいであった。
これまで、筆者らが継続して調査してきた東北タイおよび北タイでの学校調査から、次の項目を選び出した。
1.飲料水 学校において安心して飲むことのできる安全かつ十分な水
が確保されているか。
2.トイレ 清潔で安心して利用できるトイレがあるか。
3.ゴミ 学校内は清潔に保たれ、不要なゴミが散乱していないか。ま
た、処分に当たっては適切に処理されているか。
4.教室環境1 照度 読書に十分かつ適切な照度が確保されているか。
5.教室環境2 黒板 文字の見やすい黒板であるか。
6.教室環境3 机・椅子 机・椅子のサイズや数、品質は十分か。
7.教室環境4 埃、ゴミ 埃、ゴミがなく、衛生的に清掃されているか。
学校環境を整備するためには、大規模な予算が必要である。しかし、運良く学校環境整備のための援助を受けることができたとしても、学校環境を維持してい
く意識と方法がなければ、浪費や誤った使用によってせっかくの支援が無駄に終わってしまうこともある。学校環境を整備することははじめに予算ありきでは決
してない。大切に使用する心や清潔に保つための努力、安全に対する配慮や快適さを確保するための努力、さらには工夫する知恵が必要である。こうした心がけ
や習慣と予算的措置が相まって、快適な学校環境が整備されるのである。そのためには、現在の各学校の環境の水準を測定し、基準に照らして評価することが第
一である。そのためには、何を点検すればよいのか、どのような尺度で測ればよいのか、その値をどのように評価すればよいのかなどについての基本的知識と技
術を移転しなければならない。どのくらいの頻度で測定し、基準に満たない場合には、どのように改善していくことが望ましいかなど、項目に応じた方法が存在
している。また、点検項目は学校の状況によっても異なっている。学校の状況に合わせて柔軟に対応できる知識と技術を身につけてほしいと望んでいる。そのた
めの目安となる項目と見方を本年度は検討した。
12月に行われたワークショップでは、日本での経験とタイ国における調査研究の成果をふまえて、各学校に紹介してその必要性について理解を図ることがで
きた。今後は各学校に応じた項目の選定と定期点検をすることの必要性の理解に努めていく必要があるだろう。