第2回ワーク ショップ議事録

1.開会挨拶
益本
 皆さんお忙しい中ありがとうございます。第2回のワークショップでございますが、実質的議事に時間をさきたいので、挨拶は省略しまして、さっそく議事に 入りたいと思います。

2.前回ワークショップ議事録確認
下田
 前回のワークショップの議事録についてですが、まだ作業が一部終了しておりませんので、本日は皆さまに配付することができません。次回ワークショップで 確認をしたいと思います。現在までの作業状況ですが、半数の方から修正原稿をいただいております。今後は大妻でひととおり取りまとめた電子ファイルを修正 がまだの方にメールで添付し、修正をお願いしたいと思います。この場合は、各人がバラバラに電子ファイルを返信していだたくとこちらの編集作業が大変なの で、回覧方式での修正をお願い致します。
 来週早々には大妻から最初の方に発信してはじめていきたいと思います。今後のワークショップも同様のやり方をとっていきます。4回のワークショップで議 事録を作成してくわけですが、年度末に報告書として報告する予定になっておりますで、その都度作業が順調に運びますよう、ご協力をお願い致します。

3.配布物確認
下田
 次に配付物の確認をさせていただきます。お手もとの資料の1及び2をご覧下さい。
 まず資料1ですが、6月24日にJICA国際協力総合研修所で行われました拠点システム発足セミナーの中から、大澤先生の発言部分だけを抜粋したもので す。各自でお読みいただければと配付しました。
 資料2ですが、本事業の話を聞きつけました大妻女子大の調査広報室の担当者が7月に大澤先生の所に取材にきまして、その内容を学内向けの学院報に掲載し たものです。

大澤
 資料1は私が口頭で話したことを文科省がテープ起こししたものです。だいたい10分くらいで話したことですが、読み返してみますと、それなりに素人に分 かるように話していますので、拠点とは何なのか、学校保健がどういうふうにからんでいけるのかという議論のひとつの資料にはなるので、御参考にしていただ きたいと思います。

4.データバンク登録事業報告
大澤
  では、資料3のデータバンク登録事業報告をお願いします。その前にすでにご案内したように、日本学校保健学会をはじめ、いくつかの学会の会員名簿を頼り に、会員の方々に拠点事業の主旨を説明して、登録のお願いをしましたところ、ファックス、メールでたくさん反応がありました。
 資料3に関してですが、学校保健学会と日本体育学会の名簿から抽出しました2500名に、資料の2頁下以降3頁にあります依頼文、ならびに4頁にありま す登録用紙を送付いたしました。また3頁に書いてありますように、Eメールでの登録を希望される方には Eメール用の登録用紙を送付しました。
 9月16日の段階で登録希望者は約220名です。現在のところ54名の方からEメール用の登録用紙を送ってほしいとの連絡がきましたので、送付しまし た。今日も2人来ましたので、計56人で、そのうち記入済なのが26人。それ以外の方からはまだ記入済の登録用紙を送られて来てないのですが、わざわざE メールの登録用紙を請求するくらいでから、登録してくれるものと考え、それも数に入れて220名ということになります。
 すでに161名はデータとして入力いたしました。それらの方々の集計結果を下に示してあります。年齢層と男女構成を載せましたが、登録者の年齢構成は昭 和20年代生まれの方が1番多く、昭和50年代生まれの学生さんもそれなりに登録してくれています。男女比は男性52.8%、女性47.7になっていま す。
 今後の登録作業としましては、どんなことをしていただけるかといったことを詳細なアンケートとして集めたいと思っています。今回FAXで登録用紙を受け 付けたところ、FAXの解像度の問題で判読に労力がかかったので、登録用紙にEメールを記入していただいた方には、コストも安いので、Eメールを使って いったほうがいいと考えております。Eメールを使える環境にない方には、FAXより郵送のほうが、読めないといったことがないと思います。
 6頁以降からすでに登録していただいた方の名簿になっています。基本的には郵便番号順にソートして、北からの順番になっています。
 大正や昭和1桁生まれの方も登録していて、元気だなというのが感想です。学会の名誉会員の70歳以上の方もちらほらお見えですし、関連の学会の学会長さ んや、薬剤師会の会長さんも入っているし、いろんなメンバーがいるんだなという、そんな感想を持っています。
 御意見、感想があれば、とくにフォーマットをつくってくださった國土さんからなにかあれば。

國土
 専門分野のチェック状況はどういった状況でしょうか?

大澤
 保健指導をチェックしている方が多いように思います。次のアンケートのために、今はEメールや住所の記入を優先してしまっているため、専門分野について の集計をちゃんと行っていないのですが、保健指導、健康管理、この2つが多かったように感じます。その他の分野では精神衛生とお書きになった方もいらっ しゃいます。あと多いというより目立ったのが障害児教育と書かれた方です。
 障害児教育は筑波大学が拠点ですから、それはそれで筑波の中田教授に情報を差し上げたいところです。最終的にはこのデータバンクは筑波大学のファイルの 中に入るのではと思います。つまり全国の人が共用できるように状態になるのではと思いますが、個人情報ですので、そうならないかもしれませんが。
 先ほどの話では触れておりませんが、タイ国内における登録も今やっております。ウボンで77名が現在登録をしています。

下田
 チェンマイでは調査をしている状況です。

大澤
 チェンマイでも登録してくださる方が何人かは出てくるだろうということですが、タイではちょっと誤解されて伝わっているような気がしないでもないのです ね。日本に行けるからと旅行の申込書のような理解をされているむきがありまして、困るなと思っています。
 できれば全員呼びたいとは思いますけど、それは無理なので。
何か他に質問はありますか? では、今後の予定を下田さんお願い致します。

下田
 アンケートの内容をまだ知らないのですが、詳細アンケートをEメールアドレスを記入していただいた方にはEメールで送った方が、後の集計が楽だと思いま す。
 それ以外の予定は1頁と2頁に書いてあるような話になってしまうのですが。

大澤
 登録業務は計画では2月まで続きます。タイからの登録がこれからでてきますが、タイ語では登録できませんから、一回英語に訳して登録するという業務もあ ります。
 当初2500人に送付し、20〜30人はかたいだろうと思っていましたが、タイから帰ってきましたら、ものすごい書類が来ていて驚きました。そういう時 代なんだなと強く感じたわけです。

(執行状況省略)

5.第1回Survey trip 報告
大澤 
 サーベイトリップの報告ということで、資料の5をご覧下さい。御案内のとおり、8月20日から9月2日にわたって、14日間、私がチェンマイとウボンと バンコクに出張をしてまいりました。その結果、チェンマイでは例えば佐川さんとチェンマイ大学の人に会うとか、あるいはコーディネーターをやっていただい ている方とお会いして、今後の打ち合わせをするというところまでです。
 ノポドンさんという方にアンケート調査を委託しまして、その方の手配でチェンマイ県各地の学校の保健が専門の先生に登録をしていただくという手はずにし ています。ウボンでは、教育委員会のシティホンさんの御案内で、ブンタリークやアンプー・シリントンあたりの学校を回って歩いて、登録もしていただきまし たし、多くの方が拠点事業に協力したいと盛り上がっておりました。
 結論からいいますと、12月13日土曜日にウボンのしかるべき場所で、できればホテルの会議室を借りたいのですが、約40名の校長先生と保健の先生に集 まっていただいて、海外におけるいわば説明会を開きまして、そこで今後の活動についてひざ詰め談判をしていきたいと、今のところはそんな計画になっていま す。非常に順調に進んでいると思っていいと思います。今後どのように展開してくか分かりませんが、大変よい感触でして、例えば、生活習慣の改善のプログラ ムですとか、学校環境衛生のチェックをしたらどうかとか、いろんな案が出ているようです。栄養や食事に関するリクエストも様々ありました。
 簡単ではありますが、これで報告とさせていただきます。何か御質問ありますでしょうか。

 話は変わりますが、本日は綾部さんにタイの行政改革について報告してもらおうと思ったのですが、欠席ということで残念です。タイはしょっちゅう行政改革 をやってますし、今回の行政改革は末端にいたるまでもの凄い変化をしていますね。我々は今後、タイをやる上には正確に知っておかなければいけないと思いま す。今回の行政改革では少なくとも12の管区がなくなって百いくつかの教育委員会になった。12の大教育管区制がなくなって小管区制になった。今までは小 学、中学、大学と教育委員会が別々にあったのが、一本化された。縦割りが横割りになったようですが、何回聞いても正確には分からない。それから、今年度か らタイのカリキュラムが変わりまして、小学校1年性、4年生、中学校1年生の3学年について、新指導要領での授業がスタートしております。来年、再来年と 順次カリキュラムがかわっていくと、そういう状況になっています。

(中略)
市村
 学習指導要領という話があったんですが、使われ方は日本と比べてどんな違いがあるのでしょうか。例えば、日本の場合は指導要領の骨子に従いきちんとその 通りにやることが要求されますが、教科書もそれにぴったりあったものがいいとされますが。

大澤
 その話をしますと、日本における学習指導要領の準拠のしかたなんていうものではございません。こういうことをやれと教育省がいうと、大きなカリキュラム から小さなプログラムまで各学校に模範的なものがくっついてきているんですが、それを各学校がさらに練り上げて、うちの学校はこうやりますよって、やるか どうかは別として皆自慢気にみせますよ。
 日本の学校では、校長が旗を振って、学習指導要領をその学校なりにリアレンジして、細かい単元まで落として、いつ教えるかなんてそんなことまでやってな いと思います。ところが私が行きましたウボンの小学校も、チェンマイの小学校も、これがうちのカリキュラムですとこんなに厚い本を見せられまして、びっく りしました。そういう意味では大変指導要領が尊重されてるんだと思います。

佐川
 教育関係の本屋さんに行きますと、先生の指導書と授業で使うテキストがセットになって売っておりまして、先生たちはそれを買い求めています。児童全員に すべての学校が買わせているかは現時点では分かりませんが、そういうテキストを使って授業が行われているのが実態です。さきほどの大澤先生の話を補足しま すと、旧指導要領では100%国が決めたカリキュラムを教えるということだったのですが、新指導要領の中では70%は国が決める、あとの30%は学校の裁 量で内容を決めなさいというカリキュラムとなっています。それが特徴です。

大澤
 今の関連でいいますと、今回の改訂で学校長の裁量権というのが、予算でも教育内容でも非常に大きくなったんですね。


 カリキュラムに関してですが、確か審査が何かをうけるって言ってませんでしたか?
 つくったものを、講習会を先にうけるんでしたっけ?

佐川
 ウボンウィタヤーコム小学校の例ですと、県を代表する小学校なので、カリキュラムにそってウボンウィタヤーコム小学校なりのカリキュラムをつくる。それ を文部省にもっていってこれでいいかというチェックをしたと伺いました。そういうことができる学校はそれをして、そうでない周辺の学校などは、ウボンウィ タヤーコム小学校のカリキュラムをおそらく参考にしながら、カリキュラムを完成していく、そいういう仕組みのようでした。

大澤
 ただ当事者能力がない学校の場合は、ウボンウィタヤーコム小学校のような学校に指導してもらいながら、いってみれば真似をするということでやっていく。 ただ心配なのは、いつもタイでは、建前とか形式とかは実に整然としているのですが、実際の中味になったときにはぐずぐずになってしまう。これはしようがな いかもしれませんが。 ですから、拠点事業の中でこれから議論していくのですが、場合によっては教材のようなものを開発して、提供していったらどうかと。これには、タイの場合で は、個々のカリキュラムの中に入ってくるコンテンツをつくってあげたほうがいいのではないかと思います。
例えば安全教育だったら、全面展開ではなく、肝心なところだけピックアップした教材をつくって提供してあげるほうがいいのではと感じてはいます。

家田
 教科書のことでお伺いしたいのですが、日本のような教科書の検定制度というのはどうでしょうか。

笠井
 正確には分からないのですが、教科書に関してマーケットシェアの高いメーカーがあるようです。また、メーカーが教科書を作成・販売する際には、日本の検 定制度のようなものがあるということを、以前教育関係者から聞いたことがあります。どのレベルで行っているかは分かりませんが。

大澤
 3社なら3社の教科書を平行してみますと、随分違いますよね。エイズの記述だけをみても随分違っている。

笠井
 それが商品の特徴になるわけです。この会社の販売路線はこの方向だ、例えば絵が大きくて分かりやすいというように、各社の特徴はだいたい決まってるよう です。

大澤
 教科書は日本のよりずっと面白い。日本のはみんな同じじゃないですか。

6.我が国の学校保健環境衛生分野の経験と国際協 力
佐川
 それでは学校環境衛生ということで、どういうふうに取り組んでいったらよいか、ひとつの方法として、チェックリストを作ることを提案します。学校の先生 が、例えば校長先生あるいは担当の先生がチェックをする。一回すれば終わりというのではなく、雨季と乾季で状況が違いますので、定期的にチェックをするこ とによって、チェック項目と季節の変動から、学校環境に対する意識の向上を通じて、環境衛生を整えていくという方法があるだろうと考えています。これは完 成版ではありません。これはイメージですが、たとえばこういうことやっていくことで進めていくことができるのではないかと、リストを試しにつくってみまし た。
 資料をみながらお話をさせていただきますが、まず項目ですね。学校環境の項目として、飲料水、飲み水、トイレ、害虫と書いてありますが、虫だけはありま せん。害獣も、ゴミとか大きな項目があります。
 飲料水で申しますと、今は井戸水をポンプで上にあげて、塩素みたいなもので消毒して水道として供給しているとおおよそなっていますが、水の検査がいった いどうなっているのか。例えば保健所が検査するか、検査者は保健所の所員か、検査頻度は年に2回か、飲み場の数は何カ所くらいあるとか、あるいは貯水器、 ここには瓶式と書いてあります。伝統的には素焼きの瓶に水をいれて、そこから水を飲むということですが、いろんな形式があると思います。その学校の飲料水 の状況はいったいどういうふうになっているのか。本来ならば水質検査をやればいいのですが、すべての学校で、例えば大腸菌の状況を検査できるわけではあり ませんので、できる範囲での調査の仕方を検討している。問題がある場合は対策という項目をつくっておいて、今回は何も書いてありませんが、検査の回数を増 やしたほうがいいとか、いろんなことを記入していくようなことが必要だろうと思います。
 トイレを取り上げれば、衛生的なのかどうなのか、臭い、汚い、きれいとか、水があるのかどうか、トイレは何カ所あるのか、適切な場所にあるのか、壊れて いるかどうか、トイレの後の処理の方法など、これはすぐに変えることはできませんが、そういうことなどチェックしてみるということですね。
 それから害虫・害獣。タイの小学校では、大きな牛を飼っていたりしますが、その牛が問題を起こすことはないのか、ないと思いますが。あるいは犬ですね、 狂犬病の処置が終っているかどうか、季節によって特に蚊が発生する場所はないのかどうか、処置をしているのかどうか、ハエとか、そういうもの等々を、必要 な項目を先生たちと相談しながら、あるいは、日本人の目でこういう項目が必要だということを相談しながら、項目をつくりチェック体制を整えていくことで可 能なのではないかというひとつの案です。
 それから、右のほうですが、教室環境と書きましたが、例えば照度、通気性(湿度、温度)、ゴミの状況、騒音、埃、粉塵そういうものもチェックする必要が あるでしょう。
 照度でいえば、照度計ではかれるわけではありませんので、点灯可能な電灯が何本あるのか、一日のうちでどのあたりが暗いのかというのも認識しておく必要 があるだろうと。それから黒板が、白墨で書いてもあまりよくみえない黒板に時々出あいますが、そういう黒板の状況や、教室の中央が暗く感じるとか、窓際が まぶしいとか、そういうことについてリストをつくって適切かどうかをチェックしていく。
 ゴミであれば、教室内のゴミ箱のゴミをいつ、どこへもっていってどう処理するのかということや、箒があるのかどうか、環境がどうしたら整うのかといった ことをチェックしていく必要があるのではないかと思っています。 用意した資料はこのくらいなのですが、写真を見ていただきながら、例えば、こんなところというのを見ていただきたいと思います。

國土
 本当は写真を見ながら話したほうがいいと思うのですが、今までの調査の結果、飲料水は学校でインタビューしますと、多くの場合は保健所が来て、調査をし ていると答えていただいています。調査項目は何ですかと具体的なことを聞くと、ちょっと分からないと。とりあえず飲み水として安全だという認識をしている 程度のお話はたくさん現地で聞いてきています。ただ、問題なのは我々が実際に以前調査したときに大腸菌がでたりする。途中経過で悪くなっていることも考え られます。
 教室環境の照度ですと、今回ずっと意識して細かく観察しましたところ、新しい教室には蛍光灯は6コついていますが、古いところは2本。もしかしたらこれ は学校の環境衛生の基準が決まっていて、この基準に照らし合わせ最近は6本になったのかと思ったんですが、スィティポンさんに聞いた状況では、よく分から ない。そんなのはないのでないかということなので、そのあたりの情報をもう少し仕入れて、新しい校舎の規格があるのかどうかといった基礎的な情報を収集す る必要があると感じました。以上です。

佐川
 何枚か写真がでてきますが、今回のために整理したわけでないので、バラバラにいろんなものが出てきますがご了承ください。これは下が学校ですが、雨期で すので、草が生えています。これは何を撮ったかといいますと、上から雨が流れて、斜面がすごいがたがたになっていて、日本では放置しておくことがおかしい くらいのとこなんですが、ところによってはこういう場所がある。子供たちはたくましくなるのかもしれませんが、学校の環境としては適切とはいえないでしょ う。
 これは、別の学校ですが、校舎の裏側に穴をほってゴミが集められております。草やよく散乱していますビニール袋を集めています。おそらく一杯になると燃 やすのでないかと思います。実はこの学校を訪問したときに、先生の宿舎が隣にあるのですが、写真を撮るのを忘れましたが、バキュームカーでトイレのタンク を吸い取っていて、僕ははじめてみたので、こんなことやるんだと実はびっくりました。
 これは男子トイレです。蛇口から水がでていて、ここは仕切りがあるだけまだいいかもしれません。
 これは何を撮ったかというと、廊下に蛍光灯があったので撮りました。タイの小中学校の一般的な大変よく見る形の学校で、オープン廊下になっていて、蛍光 灯があるのだなと思って撮りました。校舎がみえていましたが、軒がある側の窓はアミが張ってありまして、これは雨が直接入らないので、風通しがよくなるよ うになっています。校舎の中が写っていますが、最近の校舎は白く塗られています。これがその中です。黒板が写っていますが、けっこう白くて見にくい黒板で す。ここではゴミ箱とちり取りと箒がこういう形で置いてありまして、床がコンクリートだということが分かると思います。まだ比較的新しいので、 コンクリートなども割れておりません。右の方に机がおいてありますが、最近この机が多くなってきましたが、皆規格が同じです。
 窓側が写っていますが、雨が直接入るほうはガラス窓になっています。開閉できる部分は多くは鉄のドアになっています。何年生の教室か忘れましたが、全部 同じ机でサイズも同じです。まだ入ったばかりなので、大変新しい感じがします。
ほとんどの学校がそうですが、子供たちは靴を脱いで教室に入ります。足が汚れますので、 泥を落としてはいる、ヤシ、麻でできたような・・が置いてあります。
 これはひと世代前の椅子と机で、このほうが壊れやすい感じがします。この教室はテレビがありました。日本ではありませんが、盗まれないように鉄枠には いったテレビで、よくある風景です。電灯が1コしか写っていませんが、多分この教室の中には6コしかありません。あの蛍光灯は真下しか明るくしません。広 角度に照明を当てるようにできてないタイプのもので、これはどこにいっても同じようなものなんです。
 これもゴミ箱で、中にこんなものが入っていました。ゴミの多くは学校の周りで住民が売っている、ストローとビニール袋のなかに氷とジュースみたいなもの です。
 これは学校の入口のスイッチなんですが、どれが何かは確認をしませんでしたが、コンセントとスイッチで、上からたれていて、日本ではないですよね。こう いうとことは何かしたほうがいいのではないかと。

佐川
 これはノンガンホイ村小学校だったかな。屋根が壊れかかっていたので撮りました。校舎ができてもう10年以上経つと思いますが、ところによっては屋根が 割れているところがある。これは学校の中で牛を飼っていまして、牛の糞なんですが、ちょっと乾いていますが、やったばかりのときは踏んでしまうとズルッと して、シャツなんかについたら嫌だなと思いますが、すぐ乾燥して、すぐ舞い上がるのかもしれません。これで学校の中の牧草が豊かに育って、それを牛が食べ ているということです。
 これは、学校の中にあるゴミ箱で、日本にはありません。平らなチューブを利用してつくったもので、古タイヤですばらしいアイデアで関心します。中に入っ ています白くて青い文字が見えるものはスクールミルクの袋です。最近予算があるようで、幼稚園から2年生まではスクールミルクが毎日与えられている、栄養 が確保されているということです。
これは学校の中にちょっとした庭があるのですが、柵に有刺鉄線が使われていて、中に入るなということなのですが、学校の中の柵に危険なものを使うのは適当 ではないと思い撮りました。
 これもノンガンホイ村小学校ですが、左のほうが男子用のトイレですが、その奥に学校のすみですが、毎朝この学校では掃除して、集めたゴミを、落ち葉とス クールミルクの袋やそこらで買い食いしたビニール袋などですが、ここで燃やしています。日本だったらダオキシンの問題でまずいとすぐいわれる映像だと思い ます。
 これは、別の小学校ですが、水飲み場ですね。あの真ん中のところに水が入っていまして、コップがふせていまして、下に水をうけるのがあるので、あれがあ るのとないのでは大きな違いだと思います。こういうふうにすることで、洗ってまた返すという習慣になっているのだろうと思います。黒いのがゴミ箱でしょ う。
 これが最後ですが、子供がゴム跳びをしております。これはバスケット、バレーの兼用コートです。雨が降ると雨期ではズブズブになってしまいますので、あ るいは草が生えてプレイできなくなってしまいますので、タイの標準的な形はコンクリートです。
 子供たちは多くは草履で生活していますので、コンクリートの上をこういうふうに裸足で遊び回るということにならざるを得ない。そのことによって子供たち の足がどれだけ傷つけられるのかというデータがないのでわかりませんが、日本の感覚ではちょっと危ないのではないかという感じがします。それは国の事情な ので、すぐにやめたほうがいいなんでことはいえませんが、日本の感覚からいうと大丈夫なのかなと思います。
 すみません、長くなりましたが、以上です。

大澤
 今のような状況を想像していただいて、もう一度このチェックリストを見ていただいて。先ほど佐川さんも言っていましたが、これはあくまでもドラフトであ るので、いろいろご訂正をお願いします。今日ここで完成するのは不可能なんですが、次回11月のワークショップにはできればある程度めどをつけたい。12 月のウボンの現地の説明会で提案ができればいいと思うので、どうぞ御自由に。

笠井
 佐川先生ありがとうございました。各項目についての要望や、批判はないのですが、加えていただきたいものとして、学校給食に関わる項目があります。
 今、思いつくままに言いますと、食品保管状態、調理場の衛生面に関する項目、調理場にある水の衛生、食品の配膳に関わる安全問題などです。

大澤
 それと調理員の衛生。手を洗わせないといけない。

國土
 佐川さんとチェックリストをつくるときに問題になったのが、我々が使っている測定器具などが使えないということがいちばん難しい。できましたら、食品の 保管ならどういった観点で評価するのかアイデアがほしいですね。

笠井
 日本の評価基準からいうとすべてが合格以下のような状態だと思います。しかし、給食に関してようやく予算が降りて、全校である程度実施されるようになっ てきています。現場ではいろいろ工夫して実施してるようなので、タイ人から見て何を基準に食器を管理しているかというのかをある程度聞いてみるといいと思 います。全て日本の基準で考えるのではなく、タイの観点に歩み寄って評価項目を決めるほうがうまくいくのではないかと思います。

大澤
 提案させていただこうということだと思うんですね。おそらくチェンマイでもバンコクでもウボンでも、これを校長とかがご覧になって、いろいろご意見を おっしゃると思うのですが、そこで一緒につくっていくというふうにもっていったほうがいいのではないでしょうか。日本の学校環境衛生基準なんかもっていっ て、同じにやれなんていっても、そんなのはなから無理なので、ただ日本にそういうのがあるのかと聞かれたときには説明会のときに、30分くらいレクチャー するということでいいのではないか。
 今、議論しておきたいのは、こういった大きな項目ですね、まだ出ていないような。

佐川
 笠井さんがいってくれたようなアイデアは日本側としてもっていて、むしろワークショップの中でどういった項目について検討すればいいかの彼らの案をまず 作成して、それに助言していくような形がいいのではないかと思いますね。

大澤
 将来的にはミャンマーやラオスにも持っていきたいわけだから、あまり背伸びしなくても。
 前に進まないから。あとは誰がチェックするのだとか、どういう評価方法でするのか。例えば大腸菌なんかは僕らがやったようなコリテップを使えば客観的に できるわけですから。例えば水を試験官の中に入れて目でみる、飲んでみる、臭いをかいでみる。そういうことならすぐできるわけですよね。例えばそういう話 をつめていくとか。
 「害虫」というのは、僕の30年前の衛生学の知識でいすと衛生動物というのではないでしょうか。

益本
 学校環境衛生のチェックリストで補強していくほうがいいかなという素人のアイデアですが、お話に出てきた中で重要なのは、季節がタイでは雨季と乾季とで はまったく違うので、時期を少なくとも2回は必要になってきますね。それから学校の規模で随分施設が違ってくるので、規模を記入することが必要かなと。こ れは釈迦に説法ですが、保健室の設置とか規模とが必要かなと。それから通気性のところに関係して、扇風機の設置状況とか、エアコンはちょっとないとは思い ますが。
 それから記入する際に、記入する側にたってみますと、わりと最近建った建物と以前からある建物では相当設備が違うので、その記入の仕方をどうするか。教 室ごとにするのか、建物ごとにするのか、そのあたりを考える必要があると思います。以上です。

佐川
 ありがとうございます。

下田
 学校環境衛生についてよろしいでしょうか。寮制の学校については、衣服の洗濯場があるかどうかという質問項目を加えてはどうでしょうか。8月に調査した チェンマイ県のメーアイにあるラープラチャーヌックロー30学校は寮制でして、そこには大きな洗濯場がありました。日曜日に訪問したのですが、ちょうど、 生徒たちが洗濯をしているところに出くわしました。衛生面のチェック項目として是非加えていただきたいと思います。

大澤
 保健室という項目はあっていいですね。寮も個室と洗濯場…

笠井
 寮がある場合は食事をする場もあります。一日の生活が全て入ることになります。

大澤
 でも一応学校環境衛生チェックリストにはいります。
 他に大きなもので抜けているものがあれば御指摘いただいて、それをもんでもらう。

市村
 教室の中の掃除ってどうなっているんですか?

佐川
 それは子供たちが箒で埃をはきだす。だから箒はちゃんとあったほうがいい。

大澤
 箒やバケツをしまうロッカーをつくったほうがいいなと思うんですね。教室中に散乱してますよね。あと、環境衛生チェックリストにはどうかと思います。ま た、便所の位置が悪いん場合があります。トイレと飲料水を汲み上げる井戸が近くて。

笠井
 少し脱線するようなんですが、カンボジアに昨年WFPの関係で行ったときに、同じ指摘がありました。トイレと飲料水を汲み上げる井戸が近いと衛生上よく ないことを知らない人たちがたくさんいます。それがいけないことを外国人から始めて言われたという話を聞きました。

大澤
 益本先生にご専門中のご専門の糞のことについて聞きますが、ノンガンホイ村の小学校が、校庭に何頭かの牛が草をはんでいて、それがうんちをするわけです よ。あれはどうなんですか衛生学的には。

益本
 衛生学は専門ではないですが、バクテリアなんかが当然いるでしょうね。しかし、自然のサイクルの中では、生活する人も平気でいますよね。糞のことについ ていえば、そこにはハエなど糞を食べる、しかも人間にも悪さをするの昆虫類がいる。それともうひとつはこれは専門なんですが、糞を食べたり、糞を地面に埋 めるコガネムシが、糞虫がいます。それは人間にとっては益虫になるわけです。ハエとかアブの幼虫がふえないようにしている。 自然のサイクルの中でいうと、牛の糞はどうかといえば、我々文明人にとっては有害だけど、現地の人にとっては特別有害でもないといえます。

大澤
 では、糞ぐらいで騒ぎたてるなと

益本
 まあ、そういうことです。一番こわいのは人間の糞です。

大澤
 校庭が牧場になっている状態ですから、なんかセパレートしなさいといいたくなるのですが。

國土
 私も田舎の出身で、家に牛がいたという経験がありますが、田舎の家の感覚では、糞は肥料とするんですね、有益な価値を認めてますよね。その辺のバランス をもう少し考えてもいいのかもしれません。

益本
 50年前は農村行くと、馬と一緒の家、うまやがあって壁だけで住居があるというのは珍しくなかったです。中国なんかでも、いろんな場所によって違いはる でしょうけど、トイレの部分は、上でポットンをすると下でブタがまっている、それでブタが太ったらそれを食べるというリサイクルがあった。
 ここの場所でそういうこといったらまずいでしょうが、有る程度うまくまわっている範囲では問題が少ない。タイのトイレは衛生的だと思いますよ。水洗です から。問題は少数民族ですね。8年くらい前まで少数民族の方々にトイレを普及させるというNGOもありました。

大澤
 今回、何人かの校長先生に会いましたけど、頭ジラミが非常に多いといってました。これは日本の明治時代の学校環境衛生が始まった動機が頭ジラミなんです ね。日本のとった対策、経験がそのままいきるかどうかですが、かなり参考になるのではと思っています。

笠井
 シラミの話はチェンマイも同じです。山岳部にいるので、乾季は気温が低くてお風呂にあまり入らない少数民族や、もともとあまりお風呂に入る習慣がないメ オ族のような子どもたちにはシラミが非常に多いと聞きます。かゆくて気持ちが集中できないために勉強ができないそうです。学校に来て友達からうつり、また 家に帰ると家にもシラミがもいるということで、全然よくならないと、先生方が嘆いていました。

大澤
 山地民は御存知のように髪の毛が長い民族が多いですよね。しかもアカみたいにヘルメットみたいのをかぶっている。それが寄宿舎なんかで生活しているとい やでもうつってしまいます。新手の学校の伝染病といっていいような状態ですよね。だから、さきほど下田さんが寮のこといってましけど、実はかなり大きな問 題なんだなと思ってます。
 メーアイの学校の寮の話ですが、あそこにはHIVの陽性の子供が3人いるんですね。そういう子供が他の子供と一緒に生活する。かなりきちっと対策をして いかないとまずいと思いますね。HIVだけでなく、他の病気の子供もたくさんいます。
 この拠点の仕事としてはかなり重要です。客観的にものがあって、評価して変えられますものね。取り掛かりとしては適当なテーマになってくるのではないで しょうか。

笠井
 さきほどの牛の話にもどるんですけど、どちらかといえばあまり緊急性のない話をタイ側にすると非常に嫌がられる可能性があってうまくいかないかもしれま せん。でもシラミのような問題は、現地の人も非常に困っている問題です。そういう問題を重点的に改善するような環境衛生項目をチェックする方が、タイ側か ら受け入れられてうまくいくのではないかと思います。

大澤
 他に何かありますか?

佐川
 先ほど笠井さんから給食関係のコメントいただきました。学校環境衛生ということだけなく、いろんなことをチェックリスト方式でやっていく可能生が高いの なら、項目をつくっていただいて、それを併せてもっていく。もしかしたら家田先生の安全という点でもチェックリストでできる項目もあれば、そうでない部分 もあるのであれば、持ち寄って完成させるということがいいかなと思います。以上です。

大澤
 それでは、5分くらい休憩にしたいと思います。

7.我が国の学校保健安全教育分野の経験と国際協 力
大澤
 家田先生にお願いします。
 我が国の学校保健安全教育分野の経験と国際協力です。

家田
 学校安全の点でも、チェックリストがあるといいと思うのですが、そのところはまだ考えておりませんでした。基本的なところから、私としては聞いてみたい と思います。
 それが、学校安全計画を立てて、実施して評価するという基本的なことなんですね。例えば、1番から順番に聞いておきたいことを挙げておきますと、1番、 学校安全の計画を毎年立案しているか。2番目として、学校安全計画を実施するために職員の会議を年に何回開いているか。3番目、安全点検を実施しているか  4番目 学校内の危険個所を調査しているか 5番目事故・障害の発生状況の実態を把握しているか。また関連で、事故・障害のデータを整理しているか 6 番目 事故・障害の原因を分析しているか 7番目 毎年安全対策についての評価をしているか。これは安全計画といったほうがいいかもしれません。こういっ た基本的なことを聞いてみたうえで、さきほどあったような、学校中の安全環境については調べてもらったほうがいいですよと、提案したほうがいいなと思いま した。
 ここまで何か意見があれば伺いたいと思います。

大澤
 学校保健の計画あるいは学校保健安全計画というのをタイで見たことありますか。

笠井
 聞いたことないですね。

家田
 学校保健の計画もないんですかね。

大澤
 いや、先ほどウボン・ウイッターヤーコム小学校でモデル的にとかいってましたが、その中にはありますよ。学校保健計画はあるわけですね、何月に健康診断 をやるとか、何月に便所掃除をするとか。

大澤
 現状はどうも曖昧で、かすかにあるのだということなので、いずれにしても家田先生が ご提案になっているようなことは必要ですね。

家田
 あってしかるべきと思っていますので。

大澤
 もしなかったら、日本の経験というものを紹介することはできますよね。
 20何年間タイにいっている我々が、こんな程度なんですから、きちんとした計画というようなものはないのかもしれませんね。

佐川
 タイの学校の仕組みでは、校長先生を中心とした学校を管理運営しているスタッフと、教科の先生の仕事は分かれている。おそらく校長先生に計画どうなって いますかといきなり質問すると、「ありますよ」とお答えになると思います。彼の頭の中には計画があってもそれをすべての先生たちに知らしめているかという ことになると疑問です。実は皆さんがお帰りになった月曜日の日に、ノンガンホイ村小学校に行きましたら、職員会議にぶちあたったんですね。新しい教育事務 所からの通達だと思うのですが、それを校長が読んで皆で講読しているんですね。校長が解説をして、その後でこの際ですから、なにか学校のことであれば述べ てくださいということで、先生たちが意見交換をする、そういう職員会議でした。
 それは月に1回やっているようでした。日本のようにいろんな人が提案をして、いろんなことをやっていくというより、上からのものを伝達するような学校運 営の形式だと感じました。これであれば、計画は独自にこれまではなかったという気はします。

家田
 日本だと学校保健の中に保健管理と安全管理についてのことをいろいろやってくださいと、 安全点検も・・・・・そういった基本になるような学校保健の法律はタイはいかがですか?

佐川
 ないと思います。そういう法律があるんですかという話をされたことがある。

大澤
 その辺がよくわからないのですよ。行政の指針ですとかそういのはあるのですが、法律として独立してあるのか…

國土
 さっきいいました新しい学校の施設をみると、画一化しているので、なんらかのマニュル、基準があるのではと思いますが。

大澤
 それはあるんじゃないですか。行政の指導書っていうんでしょうか、マニュアルが。
 法律については現地にいるカウンターパートの方々に調べていただくか、たぶん綾部さんが接近できるんじゃないかと思います。タイのガバメントのホーム ページはありますよね。教育省のホームページも。ぜひ佐川さん、バンコク・オフィスに問い合わせてください。

大澤
 疑問なんですけど、電話線の敷設してない学校がいっぱいありますけど。

笠井
 今回の教育改革にともなってインターネット環境が整備されたようです。ほとんどすべての学校に備わったと聞いてびっくりしました。

大澤
 ウボンの田舎の小学校では、「だいたい葬式の通知は葬式がおわったときに到着する」といってましたけど。
だからあまり一般的なことはいえないと思いますが。
 では、家田さんのほうに戻しましょう。

家田
 次の関連のことですが、資料でお配りしました藤沢市の公衆安全総点検と、下の方に春日井市の女性フォーラムの取り組みがありまして、・・・・のタウンク リエーターを主催している方がまとめられているものを整理しているものがありましたので、もってきたのですが、これは最近、・・・地区でやられているヒヤ リ地図を利用した事故防止とか犯罪防止で、それぞれの地域の中でやられている実践です。こういった手法を学校の中でもやっていくと事故防止につながるので はないかと思って紹介させていただきます。
 一番上にヒヤリ地図が書いてあります。道路などで、車や自転車、あるいはすべりや躓きによって(ひやり)とした場所を地図の上にシールで印をつけてい き、集中したあぶない場所を確認するための手法です。実際に事故や怪我が起きた場所と、もう少しで事故になったあぶなかったと認識した場所を出しあって、 そういう状況が重なれば自然に事故も発生するので、もう少しで事故になったという資料を集めて、気をつけることによって事故防止をしようということなんで すね。
 こういった手法は学内でも、どこでぶつかりそうになったとか、主に子供たちに意見を出してもうらうことになるのと思うのですが、それで学校内の危険地図 をつくって、必要なところは環境を直さないといけない。環境が直しづらいところは、ここは危ないと注意を喚起することで事故を防ぐことができる。そういう ふうに使うことができます。
これは、さきほど大澤先生がいってられた、事故防止のひとつのコンテンツということで 紹介していくことは可能かと思います。
 これは地図にして、皆で見えるようにして、どこが危ないかが分かりやすくするというものです。これについては以上です。

大澤
 学校内の危険個所ということでいいのですか。あるいは村の中の危険個所も含むのでしょうか。これは、タイ人は積極的にやるのではないでしょうか。

國土
 一点気になるのは、怪我とか安全という意識が我々のレベルと違うと思うんですよ。普段のちょっとした怪我というよりは、彼らにとっては・・・・の世界 じゃないかという気がしてしようがないのです。この中で非常に危険なカ所があっても、そのまま放置というのが現状ですので、そうなると校内での怪我の報告 を、まずはちゃんとするというシステムを整え、整ったところで怪我の種類を把握して、同時にヒアリングをしていくという二面性が必要な気がするのですが、 いかがでしょうか。

家田
 さきほどもいいましたように、一番の基本はどんな怪我が、どういう状況でどんな場所で起こっているのかというのを把握しないと、事項防止対策はできない ので、それが一番基本ですが、さらにそのうえで、実際に事故を防ぐためには起きてない場所でも、将来起こるだろう場所もあると思うので、考え方として、ヒ ヤリ体験がたまっていくと実際に小さな事故が起きて、小さな事故がたまっていくと、その中に大きな事故が起きるという、そういう考え方ですね。そういう考 え方のもとにヒヤリ体験からなくしていこうということで、事故防止をしていこうと。そのためにはヒヤリ地図の作成は大変有効だということなのです。

大澤
 統計的にも東南アジアで一番事故、交通事故が多いのはタイです。自殺や他殺も非常に多い。転落事故だけがあまり多くないだけで、あとの事故はだいたい トップクラスにある。水死もタイは東南アジア、日本よりもトップです。さすがに自殺は日本が多いのですが、日本を抜かすとタイですから、これは非常に重要 な分野で、死亡に至らないまでの傷害や軽い怪我などは、統計があれば、大変な数なのではと思います。だいたい1人亡くなると30件くらいの大怪我がありま すし、日本の経験ですと1人の死者に対して7人の身体障害者が発生するような状態になりますので、ものすごい数の事故が起きているのではと思います。
 ただ、それをウボンやチェンマイでどういうふうに展開していくかとなると、確かに危険個所を知ることも大事だと思うのです。他になにか提案はありません か。場所だけなく他にも提案ができるといいと思うのです。

笠井
 私は以前、水泳をしていたので、水の事故が気になります。タイ人は泳げる人がとても少ない。また、水に対しての危険意識が非常に少ないようです。水の事 故を防ぐことは日本人にとってはすごく大事なことなんですけれど、タイ人にはあまりその認識がないように感じます。学校の中でも、水に対する安全を教えて いる様子が多くはないようです。

大澤
 今日お願いしたのは、どういうチェックをしたらよいかということだったので、そこまで話がいってないと思うのですが、チェックするにしても先ほどいった ような、こういうこともチェックしたらということがあれば。例えば、池や川も泳げないのなら危ないのじゃないか。雨期に増水すれば、意識して近づかないと か、舟に乗るときにはライフジャケットをつけるとか。

佐川
 川もそうなんですが、水路も増水すると。あとちょっとした市街地の学校周辺の交通安全。
 これに入るかどうか分かりませんが、バイク通学が多いので、それも。
 乗り合いバスの定員も、通学に使うので、それも危険に思うのですが。

笠井
 バンコクは舟で通学することが多いので、舟から転落する事故も多いようです。

國土
 本人達には危ないという認識がないのだと思うんですよ。だからチェックが必要で、危険な場所や危険な行為とか。

大澤
 チェックすることで、ああなるほどこれは危険なんだって、チェックする人が思ってくれてもいいわけですよね。

家田
 事故っていうのは、思いがけなくて起こってしまうことが多いので、このへんは危なそうだと知ってもらうだけで事故防止になるわけでして、点検することで 教育的効果を期待しているわけです。実際に子供たちが学内の危険な箇所として意識し、発見した場所は、学校側にいって直してもらう、あるいは自分たちで直 せるところは直す、そういった学校をよくする安全を守る活動をすることはいいのではないかと。学校側が費用を出して直せないものでも、小さな所なら、生徒 が家から何かもってきて直すこともできるし。子供たちが主体になって安全な環境をつくっていくことが大事なので、提案はしていきたいと思います。

佐川
 学校安全というときに、安全管理的なことと、安全教育的なことは分けたほうがいいですよね。バイクの事故は学校が管理することではなくて、安全教育的な 教育内容としての安全ですよね。タイ人には「ウィナイ」がないとよく言われるのですが、規律ですね。バイクの事故は起こるのですが起こったときに、大けが になってしまうような行為の防衛策しかとってないから、死に至ってしまうので、そういう問題とか。

大澤
 QC的なもっていき方が、安全管理と安全教育を結びつけると思います。例えば家田先生がさっき御提案なさったような点検作業をしていだたく。そうすると どこでどういう怪我が多いのかが分かります。その実態が先生にも子供たちにも分かりますから、一番危ないところから皆で修理をしようとか、あるいはこうい う行為はやめようとか、いってみればQC的な運動にもっていって、一つひとつの原因となるものをつぶしていく。そのうちに怪我も少なくなっていくし、学校 もきれいになっていくと、そういう効果を安全についても環境衛生についても、後ででてくるでしょうが、生活の改善とか体力の増強とか、いろんなところでそ ういう展開をしていって、管理から指導、教育へともっていけるのではないかと。おそらく12月の説明会では、こんなこと調べて何になるのだろうと言われる に決まってますから、そのときには日本の経験でなぜ日本のトヨタの車がこんなによくなったかという話をします。結局小さい故障とかつぶしていくことによっ て完成された車ができあがるんだと。健康も安全も同じなんだということを僕は言うつもりなんです。だからきちんとした統計をとって、エビデンスにもとづい てやらないとただの話で終ってしまいます。ちゃんとデータをとるべきだと、僕は力説するつもりでいます。

笠井
 データがないと、なにか事業を行ったときの効果を計れないので、先に事実を調べることが大事だと思います。

大澤
 例えば12月にみなさんと話して、ある学校で事故なら事故の、あるいは事故までいかない小さな怪我、突き指や脱臼や切創、すり傷とかなんでもいいのです が、一か月統計をとってみる。それをみんなで話し合う。そのときに日本だったらどうしたのかと、僕たちはこう思うと。そして改善提案をして、2か月くらい たったら、そのデータは必ず改善されていきますね。そうすると彼らの中にはなるほどこういうやり方は合理的だと思ってくるのではないでしょうか。それだけ でも彼らに改善マインドが伝わるのではいかと思います。そのマインドをもっていろんなことに取り組んでいってもらいたい。お金をやります、モノをやりま す、人が行ってえらそうなことを言ってきます。医療援助で困っているときだけ救ってやります。そんなことをいくらやっても砂漠に水をまくようなものだと僕 は思います。

佐川
 タイにいかれてる方に質問があるんですが。測定なんかしていると足部の怪我が多いんですね。膿んでいる子とか。教室内で靴は履かないというのはどう思わ れますか。履いてもいいのではないですか。

大澤
 履かないほうが彼らは自由なんですよ。サッカーやるときもわざわざ靴を脱いで裸足でやっているんですから。

佐川
 先生たちは靴脱がないんです。我々も靴ぬがないで入るんですよ。でも子供たちは靴を脱ぎなさいと、脱がされるんですよ。

笠井
 子供の足ってどんどん大きくなりますよね。ですからしょっちゅう靴を買い替えなくてはいけません。日本でも我々が子供の頃には、大きめのサイズを買って はかされていたということがありました。タイの場合はそこまでいかなくて、常に子供は足にあわない靴を履いている可能性があると思います。教室が汚れるか ら脱ぎなさいと言われているかもしれないのもひとつの推測ですし、子供たちが足に合ってない靴をはいているから、できるだけ脱ぎたいという理由もあるかも しれません。さらに、もともと習慣的に履いていなかった時代が長かったからなるべく靴は履きたくない、むしろ最も大きい理由は、暑いので脱いじゃうので は、と私は思っていますが。

家田
 もうひとつは話題提供というようなものですが、アンケート調査の用紙をもってきました。これは愛知県内の小学校で、前回お話させていただいたのですが、 多少よその学校に比べてお医者さんにかかる怪我が多いというので、研究指定校になっているので、安全教育をしっかりやっていきたいという学校がありまし て、教育をしたり、あるいは今回朝の時間にサイレントタイムを設けようということでした。それはアンケート調査の7にあるんですが、去年この小学校で子供 の怪我で乱暴な行動や周りの人のことを考えない危ない行動が原因となったものが、56件中およそ何件くらいあったでしょうかという設問をもうけておいたの ですが、実は15件くらいということで、1/4くらいで、ちょっとひどいと。前にもいいましたが、前にいる子の顔に消しゴムをなげたり、廊下を掃除をして いるときに怒ってちり取りをぶつけたとか、友達の耳をもって机にぶつけたりとか、箒を振り回していたりとか、あまりにも基本的に問題がある行為が多いの で、これは落ち着きのなさが基本にあるのではないかと考えて、朝の時間3分なんですけど、リラックスするような音楽をかけながら、腹式呼吸そ、123で 吸って、4でとめて、ゆっりはいていくというのを目を閉じて行うことで、一回落ち着いてもらうということをはじめることになりました。
 それを入れまして、アンケートを考えました。
 8番に入れたのですが、他の子に乱暴して怪我をさせたりすると、弁償させられるという責任のことについては、どう考えているのか。他の子供に怪我させる ことはいけないことなのですが、場合によってはお金で弁償させられるようなこともある。そいういうことも知ってもらいたいということで考えました。
頭から説明していきますと、最初の8問が、事故や怪我についての知識ということで、小中学生ということで、命を落とす事故の原因は、交通事故の次はなんで しょうかということで、絵が確か・・・する、倒れたりすること。それから3番目に多いのが・・・ですね。
 小学校でお医者さんにかかるような怪我が一番多く起きている時間はどの時間かということで、これは圧倒的に休憩時間で、いつ事故が起きるのかをしっかり 把握してほしい。それから、実際に事故、怪我が起きたときに、部位はどこが多いのがということで、答えは目や顔や頭で、この学校では顔面の怪我でお医者さ んにいくことが一番多くなっています。
5番の命を落としたり、重い怪我が残ったりしないように、かばうべきとろこはどこかということで、ここでも目や顔や頭になるわけですが、一番守らなければ いけないところの怪我でお医者さんにかかるケースが多く、逆にいえば守らなければいけないからお医者さんにいくのですが、どこの怪我をしないようにしなけ ればいけないのか意識してもらう。
 6番目は、怪我の起きた場所。教室や廊下で休憩時間中に一番起きる。
 7番にいきますが、全体の1/4が乱暴な行動や他の人のことを考えない行動から起きていて、8番は、知識として、自分が他の人を怪我させた場合に、弁償 させらることがあるということを・・・・・。
 後半の8問は事故防止のための技術や行動ということで、9番はサイレントタイムで深呼吸をやることになりましたので、腹式呼吸ができますかということ、 それと怪我をしないような転び方ができますかということで、最近の子供は身のこなしが悪いので、ちょっと転んで手をついたら骨折したなんてことも多く、こ の学校でも廊下を走って転んで頭をうつ。転んだときに多少なりとも受け身ができると、これは教えてもらえるかどうかはわかないのですが、入れておきまし た。
 10番は身体の調子ですね。睡眠不足など基本的なことで調子が悪いと事故につながる。
 12番は、落ち着きがなくて興奮気味だと、乱暴な行動につながるので…
 ・・・ということで、自分が怪我をしないように気をつけましたか。それから他の人い怪我を (テープ裏面に変わるため切れています)

家田
 怪我の原因として、走ったり、暴れたりを建物の中ですることで、かなりの怪我が発生していますので、こういうことを反省してもらってこういうことがない ようにしようということで・・・・・・・(てープ乱れて聞き取れない)
 安全教育指導とか、全体的な安全計画とかを実施する前と後では、変化が起きてくるのかどうかをひとつの試みとして考えたのです。
 タイの話では・・・・ですが、話題提供ということで御紹介しました。

佐川
 1番目と2番目の問題なんですが、事故の原因の順番を覚えるというのは学校の先生が事項防止のために、どういう対策を練らなくてはいけないのかを考える 上では確かに必要だと思うのですが、これを子供に対してやっても。それとどれが一番でということを知ってもらってもあまり事故防止に効果があるのかなと思 うのですが、いかがでしょうか。

家田
 事故原因に順番があれば知っておいたほうがいいだろうと。これは死亡原因ですから、実際学校の2階の窓から転落して死んでしまったりする事故が発生して いますので。また家庭内でお風呂でおぼれるのとか、海や川や池でで、やはり死亡について、いくつかは書いておき、知っておいたほうがいいと思うのですが。

大澤
 タイではそれなりに安全教育をやっているような印象を受けます。実施しているところを見たことはないのですが、教材等をみますと、例えば、コンセントを 入れるとき、はずすときはどうしろとか。凧を上げるときはどうしろとか、そういう教材でてますよね。だからすでに学校教育の中でなんらかの形で情報は伝え られていると思います。ああいうことについてアンケートで聞くということは、ある程度教育効果で見られると思うのですが。
 これがタイで使えるということで紹介されているのではないと思うのですが、確かにテストをすることで、指導に使っていくということもありますし、純粋に プロジェクトをやる前後に、テストをして測定をしておく。何らかの形で提案しておいてもいいと思う。先ほどのチェックリストですと、客観的にどこが危ない かがでてくるわけですが、個体のレベルで、安全教育、安全管理に関する状態を図るというのは、なんらかの形でこういう方法をとらざるを得ないと思います。
 想像でいうのですが、QCのように、例えば子供に毎日寝るときにチェックしてもらう。毎日○×をつけるといいと思うのですが。
 バッテン印が少なくなり、○が多くなるということを、自分自身でフィードバックして、安全意識を変えていってもらえば成功ではないか。こういう日常的な データとさきほど笠井さんがいいました、実際の怪我や傷害のデータ、疾病や死亡事故等をきちんとした統計とが結びついていけば、時間はかかりますが、説得 力のある仕事になるのではなかと思います。
話は脱線しますが、今いったようなことを日本あるいはアメリカでやろうと思うとおそらくなかなかできないと思います。ある 地域とか学校を一気にそういっ たプログラムでやってもらうことはできないと思うのですが、タイの僕らのフィールドならできるのではないかという気がしているんですけどね。調査環境がい いですから。

家田
 今、毎日ということですが、この学校でもそういった毎日のことを振り返るようなことをやるといってました。私も身体の調子とか、落ち着いて過ごせたかな どを入れていただくようにいったように思うのですが。

大澤
 批判的な意味でいっているのではないのですが、ひっかかるのは、タイで、もし実施したときに校長や教員が言いそうなことは、じいっとして運動しないのが いいんですかと。確かにそうすれば怪我はしないと思うのですが。それを上手に切り抜ける手があれば。もし質問がでた場合、説明することはできますか。
 例えば田舎の小学校に行くと、サッカーのゴールに子供が鈴なりになって、いつ落っこちるかわかない。でも彼らにとってはそんなに危なくないと思っている のだと思うし、また、怪我もしないのかもわからないですが。
校庭で遊んでいても棒を振り回して誰かに当たるということはあると思う。タイの先生にはどういったらよいのでしょうか。

家田
 スポーツ活動に伴う必然的な、あるいは運動していて、ある程度・・・・・・ということも考えられまので、やはり、学校事故の責任問題との関連するんです が、そういう不可避の事故については、ある程度仕方にないと思います。ただ、こういう怪我をよく管理とか注意していたら防げたはずだという事故はなくなっ たほうがいいので、ここの学校でもあるように、教室の中で、知らないところでガンガン・・・を振りまいてぶつかっちゃう、そういう事故はまずいし・・・・ ですので、事故の中での絶対なくしてくべきだし、場合によっては管理責任が問われますので、区別をしていく。

(中略)

國土
 前半部分のほうは、データがないと展開できないですよね。安全教育の領域に完全にはいっていますと思います。学校の中でデータをとっていって、子供たち に教育をしていく分には、こういうったものを教材として使う方向性のほうが強いと感じました。
 後半も学校の様々な状況を考えた上で、項目立てを考えたほうがいいのではないか。我々の価値観だけ押し付けただけでは難しいと思うので、ひとつの提案に なってくるのですが、
 この調査を・・・・・に使うのがいいと思うのです。そこで地域にタイの子供たちにとって根差したいものを向こうを一緒に考えていくことが必要だと思いま す。

佐川
 國土先生がおっしゃったこととよく似ていますが、前半の方は教材としてはすごく面白いと思いました。それはむしろタイ人よりも日本人のほうが教材として 面白いのではということで、なぜかというと、経験が少なくなっている子供たちだからこそ、こういう知識がいるのではないか。タイの子供たちはいろんな経験 をしているので、かなり危険度、リスクを熟知している部分が日本人よりも多いのではないかと思うのです。タイでも「クレヨンしんちゃん」が流行ってしまっ ているので、どれが危ないことなのか情報が過多で分からなくなっているそういう感じはしますが。
 大澤先生が倒れたら危ないのではと言われたことについては、国土さんが言われてことがかなり当てははまると思うのですね。裁判で勝った負けたという問題 が多くなればなるほど、危険だということになり、そういう意味でいえば、タイはまだ運、不運ということが強くて、あるいは仏教の理解の中で仕方ないこと片 づかれしまうことの方が多くて、だから放っておいてもいいのだということではないのですが、そういう気をします。

大澤
 家庭科の教科書を見る限りでは、ちゃんと危険については教えています。例えば手を濡らしたままコンセントをいじるなかとか。
 一般的に言えば、佐川さんが言ったような運、不運といった理解なんでしょう。

國土
 もう一度、佐川さんにお話を伺いますが、日本社会の現状を考えますと、車の量とか便利な機械などを考えると、我々の想像を超えるような力が働いたりし て、注意が必要ですが、
 タイの田舎の何にもない状況では、そういう重症になる危険度が少ないくて、ヒヤッと経験が彼らにとっては学習の場になっているのではと思います。逆に日 本のほうがヒヤッとする経験が少なくて、非常に危険度が高いという社会的な違いがあるのではと思います。

8.学校給食の経験
平山
 現状を少しお話させていただこうと思います。現在はほとんどの小学校、中学校で学校給食が行われています。小学校の場合、ほとんどの学校でご飯もおかず も出ます。中学校では、ご飯やお弁当は家から持参して、ミルクは学校で支給するといったミルク給食も一割ほどみられます。これでもだいぶ中学校では、完全 給食が多くなってきています。給食を小学生が配膳している図がありますが、最近は、給食センターから配られてくることが多くなってきているようです。ま た、普通高校では基本的に給食はありませんが、夜間の定時制高校では法律で決まっていて、給食が実施されています。次のページに年表がを載せてあります。 学校給食は、明治22年、110年前ぐらいに初めて行われました。私立の小学校で始まったと書いてありますが、お寺の住職が近所の貧しい子供を集めて私塾 のような形で、そこの子供に給食を、その当時給食とは言いませんが、食事を配ったのが最初です。これはいいと、だんだんに何十年とかけて、広島、岩手、東 京にひろまっていきました。東京で実施されたのは大正に入ってからなんですが、佐伯調理学校が始めて行いました。


 この大正3年ですか?

平山
 はいそうです。これが初めて文部省のお金を受けてやったということになります。その後これはいいと文部次官が通達を出したり、文部省の訓令が出たりしま して。まだ、昭和7年の頃は貧困児童、要するにごはんがなかなか食べられない子どもを対象に、学校に行けばご飯が食べられるということで、前に笠井さんが おっしゃってましたけど、あれと同じような形で、学校に行けばとにかく一食食べられるんだと。学校に来させるためと、栄養失調を減らすために行われていま した。それが段々に戦後少し経ってから栄養というように変わってきました。
 戦前はこれを見ていただくとわかりますが、こういうものを食べていました。まだこの頃は栄養というより、とにかくご飯をおむすびにしたりして、おなかが すいている子供に食事をということで始まったわけです。タイの給食もこういうところがあるかもしれません。大正になってきますと、栄養味噌汁という名前が ついているように、段々良くなってきます。
 しかしながら第二次世界大戦が始まった後、昭和17年頃には、いきなりすいとんになるわけです。もうこの頃ですと記憶のある先生もいらっしゃるかもしれ ませんが。戦後は、ガリオア基金、ユネスコ、ララ物資等のお陰で、給食が再開したのです。一度戦争が始まったときに、特別配給と書いてありますが、なかな かうまくできないことがあったんですが。やはり戦後海外の援助があって復活するわけです。21年ぐらいから段々に復活してきました。
 ちなみに21年は学校給食の実施率が23パーセントで、それが4年で昭和25年には、海外の資金の調達がうまくいって、69パーセント一気に上がりまし た。しかし、翌年にサンフランシスコ講和条約がありまして、資金が打ち切られることになるのですが、学校に行って一食栄養のあるものを食べてくるというこ とは、やっぱりいいことだと、国家が乗り出して継続をするということに決まります。
 最近は学校給食は大きな流れはないのですが、明治から昭和、戦後にかけて、非常に大きく変わっていくことがわかると思います。
 このあとは27年には完全給食、全国すべての小学校が対象になってきます。ここまでは全国すべてはなかったのですが、昭和26年に69パーセント、翌年 にはすべての小学校で実施にいたるわけです。29年には学校給食法が制定されたりしまして、段々に日本も豊かになっていき、一食食べさせようということで はなく、栄養ということも考えていこうということになりました。


 それはどのへんですか? 33年ぐらい?

平山
 その頃です。
 牛乳をつけましょうとか、栄養の基準をきちんと作りましょうというのことが段々に出てきます。その後はあまり変わっていませんが、昭和51年頃から、パ ンに加えて米飯が給食に導入されました。それまではアメリカ等の余った小麦粉でパンを作って、学校給食に回すということがあったのですが、やはり日本人だ からご飯を食べようという運動があり、少しずつでもいいからご飯をいれていこうということになりました。この場合、補助がでるし、非常に安く米を買えま す。これ以来、もっと米飯給食の回数を増やしていこうということになっていきます。その後、子供が減ってきて、余剰教室をランチルームにしたりする学校も あります。
 平成になると学校給食100年を迎えますが、阪神震災の時には学校給食の施設を利用して、炊き出しをしました。少し前にO157食中毒が出た時に、毎 日、毎週点検すること、毎月点検するという、厳重なチェックリストができました。調理場の中の施設、すべての食材、調理委員をすべて点検しています。
 ここには平成9年までしか書いてませんが、17年度から学校栄養職員が教員として学校の中に入ってきますが、これは以前は貧しくて食べられなかったが、 最近は貧しくはないが親が作らないから食べられないということがあるので、それをどうやって補助していくか。あとで、皆さんお配りする資料の中にあるので すが、のように学校の栄養基準が決まったかというところにも、そのへんが如実に現れています。

 では先にそちらを見ていただきます。児童生徒に1回給食でこのくらい栄養を与えてくださいということが書いてあります。最近はファストフード等で脂肪を 摂り過ぎるので、それまでの30パーセント以下という目標ではなく、25から30パーセントに規定しましょうという明確な数字ができました。加えて、国民 栄養調査等を参考にしまして、土日の食事はカルシウムが足りていないので、1日に必要なカルシウムの55パーセントを給食から摂ってくださいということに なっています。普通でしたら3食のうちの1回なので、3割ちょっと摂ればいいのですが、普段の家の食事内容が大分貧しくったり、野菜を食べなくなってきて いますので、家では摂りにくいカルシウム等のミネラル類やビタミン類は給食の中で1日の半分以上は取ってください、また、どれくらいのエネルギーが必要 で、たんぱく質というのはこういう食品からとってくださいということも細かく決まっています。

 先程昭和20年ぐらいまでを見ていただきましたので、そのまま続きの給食の写真を見てください。あまりそのあとは変わらないのですが、昭和49年、ここ にいる先生方もこのころの記憶があるかと思いますが、和洋折衷で、なんでもありという給食になっています。もっとも最近は、今日は沖縄の日と決めたら、そ の日のメニューは全部沖縄風の料理、あるいは世界各国の料理や郷土料理を取り入れている学校もあります。給食のための部屋が確保されてからは、バイキング 形式もあり、その際、栄養職員が何と何を食べれば栄養的にいいのよと、自分で望ましい食事を選択できるように指導しているところもあるようです。それは非 常にいいことだと思います。与えられるものを食べるのではなく、自分で食べたいものを適切に選べるように、最近はなってきています。バイキングでは手のか かる料理も出しているようですが、これは直営方式でないと恐らくできないと思います。センター方式でないとなかなか難しいと思います。


 サラダはだめでしょ?0157で

平山
 はい。生野菜はだめで、きゅうりも全部湯どうししないとだせないという時期がありました。最近は、それ程でもないようですが。
 皆さんのにも載せてありますが、タイの栄養所要量がありましたので、載せておきました。あとで日本とどれくらい違うかごらんいただければと思います。日 本の場合は栄養所要量の何パーセントぐらいを取ってくださいという形で、給食の所要量が決まってます。タイで給食を行う場合、最初は所要量を決めてもなか なかきちんと取れないということもあるかもませんが、日本を参考にして、例えばタイの食事ではこういうものは取りにくいから、それを給食でできるだけとり ましょうという方向に将来もっていけたらいいのではなでしょうか。日本がそうでしたからタイもそういう形になっていくんではないかと思います。


 これはなんですか?タイとしか書いてませんが。

平山
 タイの栄養所要量です。


 出典はどこですか?

平山
 出典は日本の栄養所要量の付録です。
 タイで作られたものです。
 栄養所要量はなんですか?

 どれくらい食べているということ?

平山
 いいえ、これくらい食べてくださいということです。
 これが目安ですよ、ということです。

学校給食ですか?

平山
 いいえ違います。これは一般的な目安です。
 日本の場合も日本の栄養所要量から学校の給食の栄養所要量を出してますので、タイでそういうものを作るのであれば、もしかしたらもうあるのかもません が、やはりこれが参考になると思われます。


 予算は少ないの?

國土
 年齢階級が非常におおざっぱですよね。

平山
 今、國土先生からお話がありましたが、恐らくタイの保健省なり何なりにそれを言ったとすると「WHOが同様の年齢階級別の所要量を出しています」こうい う答えが返ってくると思います。WHOの1988年ですが、その時点での栄養所要量はこういう分け方になっていますので、恐らくタイも準拠したんではない かと思われます。
 お金の問題も大きいと思います。日本の場合は小学生が一食230円、中学生で260円〜270円くらいです。ただし生活保護を受けている家庭では全部国 が補助しています。日本も最初は国なり資財を投じて給食を出していましたので、軌道に乗ってきたら他の国もこういう形になっていくのではないかと思われま す。

 あとこれだけ説明しておいた方がいいかと思います。先ほど大体このぐらい食べてくださいという給食の目安があるという話をしましたが、それでも足りてな いものがあります。食物繊維が足りてません。食物繊維を6〜7歳の児童は5.9グラム、8〜9歳では6.4グラム取ってくださいねというように決められて いますが6割ぐらいしか摂れていないのが現状です。食品別にみると、足りてないのは、いも類、種実類、卵、果物等ですが、他の食品で代替できればいいもの もありますので、最終的には栄養素の方でみていることが多いようです。もしくは、一週間ぐらいのスパンでみているようです。

 先ほどのタイの施設の安全にも関係ありますが、学校給食現場でどれくらい食中毒が起こっているのかといますと、一時に比べると大分減っていますが、あれ ほど厳しく衛生管理をしていてもゼロではないです。その国、その場所の事情があると思いますが、いかに減らしていくかというのが非常に大事なことです。

 先ほどランチルームの話がでましたが、最後にちょっと。どのくらいランチルームがあるかというと、これだけあります。保有食堂がないところの方が最近少 ないと思います。最初から専用で作ってしまう学校も多いようです。こういう形で専用のところで食べています。日本の現状は今こういう形で、なかなか家庭で 補えない栄養素は学校給食で1日の半分ぐらいを補うようにしていますし、ご飯ですとか地域のものも使うというのも行われています。平成17年度までに日本 体育・学校健康センター経由で卸すものがなくなるそうです?
いつからですか?

平山
 平成17年度までに中止ということです。
 平成15年10月から名前も日本スポーツ振興センターと名称がかわり、学校給食部の名称もかわります。


 役割を終えたという感じですね。

平山
 そうです。戦後ほとんどの物資がセンターの組織を通していたのですが、徐々に少なくなってきて、もうこれで撤廃というか全部終わりにしましょうという方 向です。確かに近所でいっぱいお米が取れているのに、なんで全然違うところのお米を食べなければならないのとか等ということもあったのですが、これからは そういうことはなくなってくると思います。ざっとこういう形です。

大澤
 ありがとうございました。

9.NGOからみた協力
益本
 昨日できたばかりのニコニコボランテイア新聞の最新号60号なんですが、これは三ヶ月に1回出しているのですが、もう15年経ちまして、ニコニコボラン テイア15周年の記念の会合をやったという最新号の対談です。 先ほどいろいろお話を伺っていますが、私たちがボランテイアをやっている地域で、具体的な研究とか調査とかできないかなということで考えました。
 観光地図なんですが、ここにチェンマイがあります。北に30キロぐらいのところに____、左に入ったところがサモン郡?、チェンマイ県は非常に広いわ けですが、私どもはサモン郡?を中心にボランテイアをやっています。ただチェンマイという所は、北内部全体を統括する行政中心でもあるわけで、ここで皆さ んご希望がある地域がありましたら、いずれはいろいろな協力が設置してもらえるのではないかと。
 具体的にどんな活動をどんなところでやったらいいのかというイメージをちょっと考えてみたのですが、例えば学校環境衛生について、水などはヤーウン地域 でやったらいいのではないかと。ここはある程度の生徒がいまして、今現在小学、中学校で、1つの学校で小中学生を教えているところです。そこは乾季になる と乾燥して水が、流れがないんです。従って最近では水ためを作って、そこからポンプで引いているのですが、マレーセイなんかについて、そこで調査に協力し て、指導みたいなことができればいいと思っています。学校安全計画の家田先生のお話を伺って、これは例えばサモンのバンドン小学校あたりがいいかなと思っ ています。というのは、ある程度の人家があって、また交通もあると事故の問題などいろいろなことがあると思いますので、そういう学校と協力したらどうか と。
 給食や栄養関係についてはサモンの中学校がいいのではないかと思います。生徒数が1500くらいいますし、寮もあるので、そういったところから給食と か、栄養と量とかということで、中学校なんかがいいのではないかと思います。
喫煙、飲酒、エイズ、健康管理、これはチェンマイの中等、高等学校が、健康管理など統計指導を含めて、対応関係が良いので、いいのではないかと思っていま す。
 これはサンモンテイアンクンのにわとりプロジェクトです。それから、シラミプロジェク、ト、これはなんといっても少数民族、先ほどでてきましたがナプダ ンサンメオの小学校とかですね、これはいくらでもあるのですが、チェンダオでもありますし、ボキョオは山へ上がれば上がるほど危ないですけどね。あまり薦 められない、保証はできません。ラクールあたりでもいいかもしれませんね。そういったようにある程度イメージを描いています。釈迦に説法かもしれませんけ ど、ポイントとしては学校とこちらのテーマと合わないと、よく刷り合わせて合ったところが一番成果が上がりやすいのではないかと、そういう面では相手の学 校長とかリーダー的な先生方とよくコンタクトを取る必要があると思います。そして我々の目的をよく理解してもらって、協力してもらうことが重要だと思いま す。
 それからもう一つは相手のメリットを考えてあげるということで、我々は研究成果が上がることが第一のポイントですが、相手の方はそれではどうなのかとい うことを考えていく。
過度な期待を持たせると、後で夜中に銃弾を打ち込まれる。日本に連れてってくれるかなという幻想を抱かせないようにすることです。
 もう1つは重要なことでもあるのですが、大集団で押しかけますと、相手が引いてしまうので、専門分野の方プラス数人というぐらいで、いくつか分けて行っ たほうが、大澤先生を先頭に10人くらい行くと、向こうもそれなりに構えてしまうので、考えたほうがいいかと思います。
 あともう一点、総合的にこのプロジェクトにやっていただいたらどうかなと思っているのがオモカリシバ小学校。オモカリはよくご存知かと思いますが。これ はどのテーマにも向いていると思います。そこの小学校の建物は私どもが提供しました。以上です。

10.最近のエイズ統計と拡散メカニズムについ て
大澤
 最近のエイズ統計と拡散メカニズムについてお話します。
 先週松山で経済統計学会がありまして、去年から健康福祉統計部会という会ができまして、そこで話したことを、紹介します。
 WHOの統計ですが、横軸が1997年から2001年までで、縦軸がHIVのプレバレンスレートになっていて、これはドラックユーザーの中でどれくらい のプレバレンスがあるかというインドネシアの統計です。1998年だと0ですが99年から2001年にかけて急激に増加まして、現在はプレバレンスレート は49%です。驚くべきリスクポピュレーションになってきています。これに限らず中国では推計100万、現実には数倍あると、それから、インドが400万 弱です。アジアは今やエイズの猖獗の地であることは間違いありません。アフリカについでアジアです。
 これもWHOの統計ですが、HIVを今罹患していて存命の方が4200万人というふうになっています。これは世界全体です。それから1年間に感染した人 が500万人、2002年に亡くなった方が310万人という数字です。非常に多いということです。
 目をタイに転じますと、タイも依然として猖獗していまして、推計の患者の数が累積で67万人です。15から49歳までが65万、内、女性が22万、子供 が2万1千ということです。エイズで亡くなった方が5万5千人これは2001年だけでです。それから両親をエイズで亡くした子供たちが今29万人いるとい う数字です。
 これからエイズがどういうふうにタイに広まったかという話をします。1984年にタイに第1号のエイズ患者が出現します。これはアメリカから帰ってきた ゲイの青年です。ゲイの青年は恋人といいますか友人達に感染を広げていきます。小さな友達の輪が段々大きな輪になっていくわけです。これは模式図ですがそ の中にはドラックユーザーがおりまして注射の回し射ちをする。これは先程のインドネシアの例でもわかるようにものすごく感染率が高いですから、あっという 間にドラッグユーザーの間に広まっていきます。これを我々は第2段階でIDUの中の流行です。このイントラドラッグユーザーズの中には当然異性との性交 渉、特に売春婦との性交をするものがいるわけでして、こういう人たちに火がつく。これをコマーシャルセックスワーカー、CSWの第3段階といい、1990 年から90年代前半にかけてアウトブレイクしています。もちろんこれは今日まで続くわけです。そしてこのコマーシャルセックスワーカーから男性のお客さ ん、クライアントですね、ここでは4番目の流行段階になりますが、この人たちに移ってまいります。ここに至ってついにエイズ・エピデックという言葉を使っ ていいほどの大きな広がりになります。
 タイ政府はご存知のように1980年代から一生懸命コンドームを着けさせるということをしますが、学校がコンドーム教育を始めるのが、この第4段階に なってからでありまして時すでに遅かったわけです。ついでこの男性たちが家庭の主婦、恋人に感染を広げます。そしてその女性たちが妊娠をする。これが第5 段階、プレグナントウーマンの段階です。そして HIVの赤ちゃんが1994年あたりからボツボツ出てまいりまして、第6段階に入ります。こういうふうに感染の輪が広がっていくというように考えていま す。
 これをもう少し統計をみてまいりますと、これはタイの県別の罹患別統計、その中の私たちの馴染みのある県だけを取り上げて示してあります。1987年か ら2000年までの統計ですが、妊婦、性産業従事者、薬物常用者、性感染患者、同姓愛者となっていますがこれを県別に見ていきたいと思います。
 まず薬中IDUの連中ですが1987年から全国統計というものに近いものがぼつぼつ現れてきます。それ前の統計は病院統計でしてなかなか全国統計はあり ません。これを見ておわかりになるようにバンコクで87年で1%、88年で20%、89年で39%とぐんぐん上昇していきます。サムットプラカンでも同じ ように広がっていきます。93年には41%に達していますし、99年には50%という非常に高いプレバレンスレートになります。チェンライでは90年に 58,6%。チェンマイでは92年、93年に56%、55%と非常に高いプレバランスレートになっています。ウボンでは90年から統計がでますがいきなり 40%から始まってます。最近は統計があまりとられていないようです。また南タイは薬中の患者さんのレートが非常に高いです。97年には67%、直近では 89とか71%という恐ろしい効率で陽性になっています。
 これが薬中の患者のレートですが、実は肝心なのは先程のウエーブの2番目の2と書いてある段階がここにはまったく取られておりませんが、奇跡的にどう やって広がってくるのをバンコクのタンニャラックホスピタルが統計をとっております。これを見るとそれが劇的に増えてきているのがわかります。87年の夏 にこちらは雨季には0、それがすこし上がって1%あたりを上下します。そして1988年の2月に頭を少し持ち上げてきますが、そこからカオパンサーにかけ て半年の間に急上昇をしてまいります。7,8月には30%を超えましてそのまま推移している。薬中患者の間に広がっていくプロセスがこの折れ線グラフがよ くとらえています。ちょっと遅れてバンコク薬物治療クリニックの統計というのが出ますが、そのときには0の統計がなくて、いきなり15%から始まります。 この統計がいかに貴重かということになります。あとはタンニャラックホスピタルと同じような推移をしてきます。それからタイ政府はあわてて全国サーベラン スをはじめます。それが89年の1月でこれはいきなり35%から始まりますということになりますが、この辺の統計、88年の後半からの統計はこの3つの サーベランス、あるいは病院統計、あるいは全国のクリニック統計がきちんとあっているということになります。ですから先程の第2番目の段階の立ち上がりの 統計がとられていたということになります。
 次にコマーシャルセックスワーカーの統計を県別に見ました。これを見ておわかりになるように例えば我々のフィールドのランプーン、パヤオのあたりを見ま すといきなり46%になっている。92年には60%、タヤオでは66%、ランプーンでは93年には62%、続く94年にも62%というふうに急激に上がっ てくるのがわかります。以降少しずつ下がってくる傾向はありますが、決して改善されているとはいえないような統計が北タイでは見られます。それに対してバ ンコクは、我々はバンコクから広がった、バンコクはエイズの猖獗地だと考えがちなんですが数字をみると必ずしもそうではありません。むしろ田舎の方が大変 なことになっているということがわかります。タイの中部タイ、北部タイ、東北タイ、南タイと4つに分類していくと圧倒的に北部タイにエイズが多いことがこ れからもわかると思います。
 それからこれは第5番目の段階として表現していました女性たち、特に妊産婦の統計です。タイはかなり強引に病院に来る妊婦たちを統計とって検査していま す。従ってこういう統計が得られるわけです。これを見ますと、例えばエイズが一番典型的に多いパヤオを見ますと、90年は0%、91年に2.65%、その 後5.13%、7.44%。10%とぐんと上がってきているのがおわかりかと思います。チェンライも同じようにずうと上がってきて94年、95年あたりが 一番高くなってきます。チェンマイも同じように95年あたりをピークに落ちてきますが、勿論無視できる程小さい数字ではない。一番直近の2000年のプレ バレンスレートを見ましてもチェンマイは2.72%、チェンライが3.96%、パヤオは5.26%が妊婦のプレバランスレートであるということでありまし て、恐るべき高率です。

 このOHPはチェンマイのメーアイの測定をした学校の絵ですが、この3人はHIVに感染している子供たちで、すでに学校にあがっているわけです。この3 人ともHIVの陽性で、後にいる子供たち40人くらいなんですがエイズ孤児ということです。ですからこの問題は医療の問題から教育の問題になってきてい る。非常に深刻だということです。この3人は寮に住んでいるので、寮の衛生というところと関わってくるような問題です。このOHPはジョンホプキンスのジ オフリーさんが計算したものですが2015年まで推計しています。これまでは実測値ですが要するに北タイでは40万人の死者がでます。チェンマイの人口が 160万人ですからいかに大きい数字かがわかるかと思います。しかもエイズは子供の方にも飛び火している。これをモデル的にかいたものがこの図です。まず はホモセクシャルの間で感染が起こる。やがて薬中の人たちの間に飛び火する。この2つのチャンネルからCSWの女性たちに移ってくる。そしてこのCSWか ら男性たちに移っていき、ここから家庭の主婦たちや恋人たちに移り、やがて新生児にうつり子供たちが今学校に入っていると、こういうふうなメカニズムを私 は考えています。

 次はアンカイ村というところにこの限局してエイズの拡散メカニズムについて考えてみたいと思います。アンカイ村は94年人口265人で世帯60、平均家 族数4.2、平均年収2万5千円、このころは電化していませんでした。小学校1校、今はヤンムシャン村に統合されています。お寺が1つでお坊さん2人、出 稼ぎが48人、大人の4分の1が出稼ぎに行くという状態になっています。絶対的貧困と言ってもいい統計であるということがわかります。
いろいろ考えてみますと、簡単に言えば貧困なので、出稼ぎに行かざるをえない。出稼ぎに行ってそこで売春をするとか、恋人と性交をして移るとか、あるいは 賃労働とか運転手とか勿論売春もありますが覚せい剤等に手を出す。このような条件の中で罹患をしてくる。やがてこの若者は村に戻ってくる。そして結婚する とか、あるいは家族に移してしまうとかいうことになってきます。勿論出稼ぎに行かない人たちも、村の近くのアンプーにあるような売春宿に行くということも 勿論あるわけです。
 これは94年のアンカイ村のある世帯の構成です。この家には4人子供がいてこの中の23歳の男子がバンコクに出稼ぎに行くわけです、戻って来る時にはエ イズにかかっている。また、この家では(番号36)、この人が出稼ぎに行く、エイズに罹患し、帰ってきて奥さんに移します。そして、この奥さんは我々も 知っているカレン族のボッケオの人ですね。その人が検査もなにもしないで、別の男の人と結婚する。今のだんなは多分陽性だろうと思います。このようにし て、感染が広がっています。それからもうひとつの事例を紹介します、お母さんがいない世帯ですが、だんなが出稼ぎに行って、罹患し、戻ってきて奥さんに移 す。この2人は現在陽性で、生存しています。この子供も陽性です。メカニズムといったらおおげさですが、こういう流れで感染の広がりを理解できるのではな いかと私は考えています。

 少し話は変わりますが、これは皆さんよくご存知のピー踊りですね。
 これは、サムーンの子供たち、2000人くらいを取った統計をお示しています。悪いことが起きたとき、病気などの時、仏様や神様にお祈りするか、50 パーセントぐらいの子供がそう答えています。お坊さんに病気のとき祈ってもらうか、これも42パーセントぐらいがそうする。それと、ピーにお供えをしてい ますか、これがときどきするかが、23パーセント。次に病気になった時には、それは、自分が何か悪いことを働いたからだと思う人は、60パーセント以上の 人がそう思っている。ピーは悪いことをするかというと、これも40パーセント以上の人がそう思っている。病気や怪我は、前世の因果だと思うかは、これも 40パーセント以上の人がそう思っている。
 次に、カレン、モン、リス、タイ別に見たものですが、来世の生まれ変わりを信じるかというと、はっきり信じるかとういうのは、タイは少なく、14.1 パーセントしかし、そうかもしれないというの入れると、8割くらいになります。リスは、もっと高い。こういう統計からいろいろと想像いたします。そして、 なぜコンドームを着用しないのだろうかということを考えております。
 さて、学校で、エイズ教育を始めるのが、この92、3年頃からです。その頃からコンドーム使用率の統計があるのですが、中学生や高校生ですから調査の対 象にはなりません。この辺の統計は学校教育を受けた効果というのはない。ほとんどゼロなのです。ようやく2000年を過ぎると3.6パーセント、2001 年に7.0パーセントに増えていきますが、まだまだ低いわけです。日本は70パーセント以上になっているわけです。
 結局コンドーム教育をしてもなかなか着用しないのですが、今までのことを総合しますと、アンカイ村のことを考えますと、たとえば、これはインタービュー 調査の結果を総合してですが、コンドームをなぜしないかというと、配偶者や恋人だけと関係を持っている人は「私は必要ない」のだといいます。これは、一つ には合理的な説明です。また、ピルや手術のような別の避妊術が普及していますので、私は別にいまさら子供はできないのだからコンドームは着ける必要がない のだという理由で着けないということです。それと、正しい性知識がないということもあります。しかし、それ以外に、先程言ったように、強い精霊信仰があり まして、特に生まれ変わり信仰ですが、死の病であるエイズに対する恐れが我々が持っている恐れとは違うのです。例えば、病気になって苦しいのが困る、お金 がかかって、貧乏になってしまうから困る、友人に差別されるから困る、というわけです。しかし私たちのような本質的な死に対する恐れではない気がします。 死にいたる病としてのエイズに対する態度が私たちとはずいぶん違う。このことが強く影響して、コンドームを使わないのだろうと考えています。そして、それ が感染の拡大に繋がっているのだろうということが、いまのところの私の考え方です。
 以上です。

佐川
 チェンライ県で、数字がでてきたときに、フォーマルなマッサージパーラーとして登録されているところは、何件あって、何人いるのか?

大澤
 性産業従事者という形では、病院にやってきた人たちは把握しています。マッサージパーラー、カラオケバーとかは。
こういう統計は病院の業務統計から上がってきている数字を、こちらであれこれいじって、組み立てているわけです。ですから普通皆さんが考えるように患者一 人一人のデーターを取っていって、それを積み上げて分析をするというものではないわけです。


 エイズのメカニズムの6段階は先にモデルがあって統計で証明したのか、統計がずっと年を追うごとに出ていって、段々増えていく内容がそうであったのでで きたのか、どちらなのですか?

大澤
 統計を見ながら皆でわいわいやったということです。統計がなかったらこのような議論にはならなかったわけです。


 いろんな国でほぼ同じに増えていったところの主たるものがそう変化しているということですか?

大澤
 もちろん、途中をスキップしてしまうところもありますが、例えば、薬中があまりいない国もありますし、それからCSWもそんなにウエーブを起こすほどは いない国もあります。統計が出てこないと、こういうことはなかなか言いにくいなのですが日本の場合はこういう統計はないです。人権の問題とかあり、調査環 境は非常に悪いです。日本場合はご存知のように血液製剤による一種の医療ミスによって最大のウエーブが来るわけですから基本的に先ほどお見せしたものとは 違ってくると思います。


 アンカイ村でしたか、2段階目で、ぐっと立ち上がり総数は安定していますが、最近は5番、6番の比率が増えていっているとふうに中身が変化していると思 えばいいのですね。

大澤
 アンカイ村ですと、人口が非常に少ないですからエイズの患者さんも少ないですし、亡くなった人も今までに、5人しかいないのです。ですからウエーブを議 論するというところまでのマス、つまり、塊としての集団はないです。
 コンドームを着ければ罹患率は下がってくるということは確実なのです。例えば、ここにカンボジアの97年から2002年までのCSWの統計があります が、コンドームを着けている人たちの比率が上がってくるとHIVがゆるやかですが、下がっているのがわかります。効果はあるということです。タイでも売春 に関しては効果があったと思います。CSWについてはソンに行って、コンドームを使わない人はほとんどいないと思いますので、そこから移るのは随分さがっ ているわけです。