第4回ワーク ショップ議事録(一部抜粋)

7. 途上国の水質の管理と技術協力について
開発コンサルタントの仕事の流れ
 案件の形成 → 投資効果の調査 → 事業運営の管理

案件の形成の流れ
 現場での地域ニーズの確認 → ドナー国の資金とニーズをすり合わせ案件を形成

コンサルタントは、全体を見るゼネラリストと各方面のスペシャリストでチームを形成

配水支援の目的
・衛生な水を供給する
・水確保のための時間を短縮することで手のかかる農業をしたり、学校にいけるようにすることで生活水準を向上させること

具体例としてジャマイカ・ケニア・インドネシアの3案件を紹介

<ジャマイカの案件>
資金:日本の円借款
給水人口:約50万人
事業地:首都キングストンから車で40分ほどにあるスパニッシュタウン
給水状況:
 昼間は水圧が低く水道から水が出ず、夜は水圧が高くなるために老朽化し破裂した水道 管から水漏れが激しくなり道路上に水溜りが出来ている。
 現地の管理主体である水道公社が修理を行えないために老朽化が進んでいる。
配水方法:都市型配水
事業内容:
配水管の交換や配水施設の修理
水道公社の組織改革のアドバイザー
現地作業員の確保のための労働習慣などの調査

<ケニアの案件>
資金:JICAの無償資金援助
給水人口:約5万人
事業地:メルー
(首都ナイロビから北へ300km行ったところにあるケニア山の麓の町、赤道直下だが 標高1700m以上であるので涼しい気候)
給水状況:
遠い川に水を汲みに行っている。
配水方法:
各戸給水と公共水源のうち村の状況にあった方を使用する
事業内容:
小学校などでの水道使用法の教育の計画、水道設備の整備(ポンプを使わない簡易なも の)、水道使用法の教育について
 タイで配水管を設置したところ、水道管に勝手に穴をあけて自分の所に水をひいてしまう事例が発生した。このようなことが起こると衛生管理などで問題が発 生してしまうので、やってはいけないということを教える必要がある。
また、水については川で汲んできた水などは煮沸をしようという衛生教育も行っている。
子どもを教育することで親にもそのような教育を徹底する。

<インドネシアの案件>
資金:JICAの無償資金援助
給水人口:数千人規模の村9つ
事業地:ムサテンガラ諸島
給水状況:
非飲用水は用水路から汲み、飲用水は井戸水
水道を引いている場合では、水が出ないことがあるために1日中蛇口を開けておきタライにためることが日常化している。そのため水圧が高まらず、結局水道と して機能していない。
配水方法:
各戸給水と公共水源のうち村の状況にあった方を使用する
事業内容:
山の上に貯水池を作り配水をする。
夜間にタライに貯めることをやめるようにする啓蒙活動。
運営方法として配水の水圧を高めるために夜間は給水を中止する。

<質疑応答>
Q、蛇口から出る水が飲めるということは高度なことであり、発展途上国で行おうとするとコストが高くなり非効率的ではないか。飲用以外になら使える水道の 水準ではいけないのか
A、日本の援助の場合、水道というと飲料水となる。日本の省庁の審査では残留塩素までチェックされる。世界銀行の場合、飲用する場合は煮沸させることを啓 蒙させるような方法で水質の基準をとっている。結局は、援助機関次第といえる

8. タイの新学習指導要領について
<背景>
第7次国家教育開発計画
時期:1992年から1997年にかけて
内容:教育の民営化と地方分権化

新国家教育法
時期:1999年8月制定、2002年より段階的に実施
内容:1.自然環境と調和した科学技術の知識・技能の発展
2.宗教・文化・土地の知識の重視
3.民間による教育・管理・運営の促進
4.地方における教育地区の設立

これらを受けて2001年に新学習指導要領が制定された
内容:学習者が自ら計画し、発見し、学ぶ教育
ナショナリズム・グローバリズム・ローカリズムの調和

2001年 基礎レベル学習指導要領が教育省から配布
2002年 パイロット校でテスト的に新学習指導要領を導入
2005年 全学年・全学校で実施(予定)
科目
 旧課程:「基礎科目」「生活形成」「生活経験」「職業基礎」
 新課程:「タイ語」「数学」「理科」「社会」「宗教・文化」「保健体育」「美術」 「職業技術教育」「外国語(主に英語)」

教育で行っていくもの
人間のライフサイクルの理解
人間の身体と心の発育と発達を理解すること

生活の上でのスキルの習得
生活と健康につながる家族の影響の理解
タイ文化に従った自己の性にふさわしい行動
男女の違いと特徴の理解
身体の清潔の管理
性に関する過ちを知り、回避する(特にエイズ予防が重要視される)

スポーツの美徳の尊重
スポーツの美を慈しむ
ファイティングスピリッツやスポーツマン精神を持つ
ルール・規則・権利を尊重する
運動・ゲーム・スポーツを愛好する

健康
病気の予防
健康のための能力の増進
健康の増進

生活安全
事故防止
タイ人の喧嘩になりやすい気質を理解し危険を回避する
習慣性薬物など回避
健康に関する不安行為の予防・回避


9. 来年度事業およびタイ調査についての意見交換
平成16年度事業
4月初旬 文部科学省による16年度拠点システム事業実施要綱の決定と 各事業計画書提出依頼通知
4月末  16年度各事業計画の文部科学省への提出締め切り
5月中  文部科学省と事業実施者との16年度各事業計画にかかる協議等
5月下旬 第1回拠点システム運営委員会(平成16年度事業計画審議) 、各事業の実施責任者から16年度事業計画説明
6月    16年度事業予算示達

来年度に目指す事業は援助モジュールの構築である。
援助の対象国は本事業の中心メンバーたちにとって経験豊富なタイで行う。

 ウボンの11校とチェンマイの5校を対象にして学校保健援助の試みを行っていく。
 それらの学校では、それぞれに学校保健分野の分野を割り当てて試験的にカリキュラムの改善や水質の管理などを学校主体で実施してもらい、実施可能な分野 を見極めたい。
 また、その分野については再来年以降力をいれてさらに援助対象を広域にしたいと思う。


10. 最終報告づくりについて・電子アーカイブ事業と関連して
 電子アーカイブについては、報告書を公開できる形にすることで対応する。
 そのためにアーカイブのためのカテゴリわけを行い、それに沿って報告書は章を作り、各メンバーが担当することになった。担当区分は以下のように決まっ た。

学校保健分野カテゴリ案
1 学校保健
1-1 保健教育
1-1-1 カリキュラム開発:笠井
1-1-2 教材教具開発:笠井
1-1-3 性・エイズ教育:笠井
1-1-4 学校安全教育:家田
1-1-5 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育:市村
1-2 保健指導
1-2-1 学校給食・栄養指導:平山
1-2-2 性・エイズ指導:笠井
1-2-3 学校安全指導:家田
1-2-4 喫煙・飲酒・薬物乱用防止指導:市村
1-2-5 体力づくり:西嶋
1-2-6 生活習慣の改善:西嶋
1-3 保健管理
1-3-1 学校環境衛生: 國土・佐川
1-3-2 健康診断:市村
1-4 保健組織活動
1-4-1 学校保健関係要員の育成:市村・笠井
1-4-2 学校保健委員会:家田
1-4-3 地域・家庭との連携:家田
1-5 学校保健統計・評価
1-5-1 協力事業の評価:大澤
1-5-2 学校保健統計:大澤

11. 第2回タイ調査報告
佐川
 ライフスタイルについてのデータ収集
 子どもたちの生活様式をデータとして比較
 子どもの健康生活の向上

家田
危険地図を子どもたちが作成
 授業中に以前事故が起きた場所やヒヤリとした経験のある場所を話し合う
 下校途中などで実際のその場所を見てみる
 地図にそれらの地点にシールを貼らせるなどして危険地図を作る
 掲示し事故防止につなげる
 
ここでいう危険とは
 交通事故やそれを招く路上駐車・放置自転車・路上障害物など
 川・池・沼・沢などの地理的危険
 蛇や毒草などの危険な動植物
 恐喝・ひったくり・痴漢などの犯罪

國土
 学校環境衛生(飲料水・トイレなど 飲料水で大腸菌が検出された例有り)
 ゴミ(分別されていない)
 教室(照明、黒板、机・イス、衛生状態 柱で釘が出ているなどの危険有り)
 水質(今後調査を進める)

西嶋
 人の体力は初めの20年で上昇し、次の20年で維持し、その後落ちていく
 最大値を高めることと、最大値を維持することが体力づくりの戦略
 これらのために必要なものは運動・食事・睡眠・遊び・勉強

アンケートについて 
 タイの各学校の先生を対象にしたアンケート
 食生活習慣の改善(給食問題)
  トイレ数が不足、衛生状態が悪い、使い方を理解していないなど
 生活習慣の改善
  先生やる気なし、サボり

最優先課題が分かれている
栄養状態の改善が最重要項目だとされているが、栄養不足の証拠がないので調査が必要


13. データバンク登録者を対象としたインタビュー調査(国内)の現況と予定
内容
調査日時、対象者氏名、所属など。
どのような国、課題、手順で援助をしていくべきかをインタビューで調査を行う。
12月に実施した国内アンケート調査を参考としてもよい。


14. ニコニコボランティアの組織と今後の拠点事業との関連について
 1980年から北タイで調査研究をしていて、その頃の山奥の農村は非常に貧しく、子供達の体格も貧弱で、学校にいけないことがよく見られた。研究の情報 を頂いているお返しとしてニコニコボランティアは始まった。
 当初は5万バーツくらいの基金だったが、色々な方々から寄付を得て、現在は55万バーツまで増えている。1991年にはタイの文部省から認可も得た。 ニコニコボランティアの活動内容はサムーン郡で学校に資金を寄付して、それを使って家畜等を購入し、児童・生徒が育って、それらを食べたり、または売って お金にしたりする。またその売ったお金で次の家畜を購入し・育てていくというサイクルで運営している。そのサイクルの中の収益で、学校の備品を購入した り、奨学金を設置したりしている。

拠点事業としては、来年度の各学校に専門分野を割り当てて実施可能かを試す際に、ニコニコボランティアの学校の現場と共に活動してきた経験が有用であるの で、経験の提供を頂いていこうと考えている。